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2023年度 大学入学共通テスト 国語 分析

従来、国語の読解問題では、一つの文章を正確に読み取ることが最重要課題だった。2020年度まで実施されていた大学入試センター試験の国語の問題は、評論・小説・古文・漢文を扱う4つの大問から構成されており、限られた時間内で、各大問において「一つのまとまりのある文章を読み取り、その内容を正確に言い換えている選択肢を見抜く」能力が求められていたと言える。

これに対して、2021年度から実施されている大学入学共通テストの国語の問題では、大問が4題、制限時間が80分、全設問が記号選択問題という形式面での変更はないものの、一つの大問で複数の資料が示されるパターンが多くなった。例えば、2023年度本試験の第1問では、同じ題材について異なる著者が異なる角度から考察した2つの評論を読ませた上で、それらを関連づけるとどのような解釈が導けるのかを答えさせる。他にも、第2問では小説の舞台となった時代の雑誌広告が資料として提示されており、第3問は古文を読んだ後の教師と生徒の対話が素材とされている。こうした傾向から、共通テストで新たに求められているのが、「図や対話を含む複数の資料を読み取った上で比較し、そこから適切な結論を導く」能力であることが推測できる。

このような変化の背景には、高等学校学習指導要領の改訂がある。高等学校では2022年度から、新しい学習指導要領が順次適用されているが、そこでは「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つが重視されている。共通テストの国語の問題では、多様な資料を比較しながら考察を進めていく能力が、主体的・対話的に学びを深めていく力だと見なされているのである。2022年度に高校へ入学した生徒が受験することになる次々回、2025年度の共通テストでは、図やグラフの読み取りを含めた新たな大問を追加し、制限時間を90分に変更することが検討されている。過去3年の共通テスト及び次回2024年度の共通テストは、この大きな変更を見据えた過渡的な問題だと言える。

受験生にとって、このような試験問題の変化は大きな不安要因かもしれないが、国語の読解問題の原則は、これまでもこれからもたった一つである。それは、「示された資料だけを根拠として、問われたことに答える」ということだ。図や対話を含む複数の資料が示されたとしても、個々の資料の内容を正確に読み取り、その内容を言い換えている選択肢を見抜かねばならないことに変わりはない。是非この点を心に留めて日頃の学習に取り組んでほしい。

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