目指せ!グローバル人材
音楽大学卒業ま近、短期間だが初めて日本を訪れ大きな刺激を受ける。卒業後は日本語と英語を専攻にして、国際文化交流と芸能活動を目指してきた。

西と東が出会う時
「21世紀になっても、ヨーロッパ人にとっては日本はまだまだ秘密が多く、なかなか理解しにくい国です。ヨーロッパと反対の方向を向いたら、そこに日本があった」日本に来た理由について、エバさんは短くこう言った。
エバ・ハダシはエフゲーニャさんの芸名である。ウクライナで生まれ、背が高く金髪、高い鼻のヨーロッパ人的な風貌から、エバさんは流暢な日本語を喋る。大学時代にウクライナ国立チャイコフスキー記念キエフ音楽院の指揮科で学ぶ際、何語を第二外国語に選ぶかを学長と相談した。その結果、ヨーロッパ人には勉強しやすいヨーロッパの言語より、あまり勉強されていない日本語に挑戦することを決めた。そして、東京にある語学学校に短期留学。そこで日本文化に魅了されたのがきっかけで、キエフ音楽院卒業後は、ウクライナシェフチェンコ記念キエフ国立大学の東洋学部に進学、日本人の礼儀と敬語についての研究で言語学修士を取った。その後、「明治時代の日本音楽における西洋文化の影響」を博士論文のテーマとしてウクライナ国立チャイコフスキー記念キエフ音楽院で研究、一昨年(2017)、博士号を取得した。学生時代から挑戦し始め、博士号を取る今日まで、日本での滞在歴は10年、日本人との繋がりも深まった彼女にとっては、日本の生活は人生の大事な部分である。
音楽、言語の才能に恵まれたエバさんは、ボーカリスト、シンガーソングライター、モデル、ラジオ・パーソナリティなど様々な顔を持つ。日本人の子どもに英語も教える。豊中市立の小・中学校で教えた時には、評価が満点だったことを彼女は誇りに思う。「最初の講義では世界地図を子どもたちに見せる。日本はどこですか。全世界と比較してみると小さいですか。日本語さえできればどこでもいけると思いますか」、彼女は眼の前に地図があるように上手に説明してくれた。「そして、子どもたちは驚いた声で日本は小さい、外国語を勉強するべきだねと言って、やる気を出す」と彼女は笑顔で話してくれた。
確かに世界は、広くて多様性に満ちている。しかしいろんな国、いろんな地域を明確に区別しても意味がない。エバさんは、区別より同一性が大事であると言う。その理想を胸に、彼女は「West and East(西と東)」というプロジェクトに取り組む。日本人の目から見ると、日本、中国、韓国などの東アジアの人々以外は全部西方人である」と彼女は言う。だからこのプロジェクトでは差異性を認識したまま、区別を特に強調せず、同じ人間性に注目する。 2019年に自身で作詞したオリジナル曲を集めた音楽アルバム「ウエストとイースト」には、西と東を融合するという彼女の理想をこめた。エバさんは次のような歌詞を書いた:
宇宙人との積極的な交流が始まれば いいのかしら?
地球は一つ、人の心も一つ、泣くことも、笑うことも、愛することも、訳す必要がない。
We all cry,
we all laugh,
We all love,
we all die,
In the same language.
歌に託した理想をより鮮明に表現したのが、3年半かけて書いた処女作である自伝的ノンフィクション小説「ウエスタン芸者」である。そこには、西から東へやってきた自分の生活を描いた。イントロダクションは国際的で、学生時代の様々な国への観光と留学の経験が。 その後は日本からウクライナへ、ウクライナから日本へ、そして日本からウクライナへと繰り返す生活に沿って進められていく。この小説はウクライナの有名な文芸雑誌に一部が掲載されたのをきっかけに、2017年に出版された。そして2019年6月、ウクライナの文学賞Koronaziya Slova(言葉の戴冠式)を受賞した。この賞は、小説、演劇の台本、映画の台本、歌詞の4つのカテゴリーで、ウクライナ語文学に貢献した作品に授与される。今年は約6000本のエントリー作品から十数本が選ばれた。「ウエスタン芸者」は、特別賞「インターナショナル・セレクション」、国際的に認められているウクライナの文学作品であるとして受賞した。西や東、どこに生活していようと、人間は人間として生きている。これこそが、この小説が人の心を動かす理由であろう。
ウクライナでは紙による出版のマーケットがまだまだ盛んなようだ。インターネットのソーシャルメディアによる交流より、友人同士で顔を合わせ、一緒に座って、コーヒーを飲みながら話す方が好き。つまり、日本より時間はゆっくり流れる。「あんまり人に会って話すことができない。その意味では、日本にいるときにはたまに寂しいと感じる時がある」とエバさん。「しかし、ウクライナの経済が日本のように発達したときには、たぶんそのゆっくりとした生活習慣もなくなるだろう」。コンビニで買ってきたコーヒーを飲み終わって、エバさんが肩をちょっとそびやかした。「世界の発展は誰にも止められない。エバ・ハダシも、このプロジェクトを進めるために、勇気をもって新たな挑戦を続けていきたい」。 ハダシは日本語の「裸足」からとった。「ゼロから」、「過去の困難を乗り越えて新しいスタートを」という意気込みを表すためだ。人生にはいろんな困難がつきまとうが、それは様々なチャンスを与えてくれるものでもある。いつまでも新たに挑戦する心をもつ、どんな世界にも心を開く人は、みなグローバル人材であろう。
留日学生、京都大学の文化人類学博士後期課程でパキスタンにおけるジェンダーと民俗について研究している。