コミュニケーション

2020年度学部新設構想特集
静岡産業大学 スポーツ人間科学部(仮称)

スポーツを、
「する」「見る」「支える」ために

静岡に新しいスポーツ文化と、
それを支える新しい拠点つくりを目指す。

新学部における教育・研究・社会貢献に欠かせない
最新のテクノロジーを備えた施設、
新しいスポーツ観に基づく研究センターなどの新設、
拡充を着々と進める静岡産業大学。
あらためて新学部開設の背景や
その特徴を探ってみることにします。

いま、スポーツには
熱い視線が寄せられている

 2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた盛り上がりは言うに及ばず、超高齢化社会への対応や子どもの体力向上、市民の健康増進や未病対策、そして地域振興、さらに直近では中学、高校での部活動指導のあり方など、スポーツにはこれまで以上に熱い視線が注がれています。加えて2016年、「日本再興戦略」における官民戦略プロジェクトの一つに《スポーツの成長産業化》が盛り込まれたように、内需拡大、地方創成が待ったなしのわが国において、スポーツには産業としても大きな期待が寄せられています。スポーツ用品の売り上げや関連施設の利用料、プロスポーツの観戦料、興行収入などの直接的な需要の他、スタジアム・アリーナの建設やスポーツツーリズム、街づくりなど周辺事業への波及効果も大きいと見られ、その市場規模は、2012年の5.5兆円から2020年に10.9兆円、2025年には15.2兆円になるとの試算もあります(日本政策投資銀行2012年)。また大学においても、18歳人口が減少する中、従来の教員、スポーツ指導者の育成に加えて、スポーツの専門性やそのノウハウを活かせる場所として、産業、教育、医療、行政、地域などでも応用できると考え、私立大学を中心にスポーツ系の学部・学科の新設も増え、全体の定員も増加傾向と言われています。

人材育成の目標も変わる。
スポーツ人間科学部(仮称)に託す理念

 こうした中、大学が育成したい人材像、学生に習得してほしい力も自ずと変化してきています。スポーツによる人間形成の観点は変わるべくもありませんが、そこへ、《スポーツを社会で活かせる人材》の育成をはじめ、やや抽象的に言えば、《社会をより良い方向へ変えていくために必要となる力》の習得という目標が加わってきます。というのも、学問の対象としてのスポーツはある種「融合領域」であり、経営に限らず、教育、文化、情報工学、心理、医学、保育・福祉など、様々な分野と関連するため、その研究を、社会の抱える様々な課題の解決に活かすことができるからです。スポーツを実践「する」だけでなく、学びの「題材にもする」ことで、産業、教育、医療、行政、地域などのあらゆる分野で活躍するために必要な力を身につけることにもつながっていきます。

 このような理念の下、全国的にも画期的な「スポーツ」を素材にして学ぶことのできる学部の開設に向け準備を進めるのが静岡産業大学。構想中の学部名称は「スポーツ人間科学部(仮称)」で、スポーツにビジネスだけでなく、教育・文化・情報科学・心理・福祉など、社会科学系の学問を融合させ、「スポーツ」を多面的に学べる場、言い換えれば、「スポーツ」をツールにした「総合政策学部」的な学部を目指します。

 学科は、《将来、スポーツを仕事にして活躍したい》人のための「人間スポーツ学科(仮称)」と、《スポーツを幼児教育、保育の素材として、保育活動に必要な知識と実技能力を身につける》人のための「こどもスポーツ教育学科(仮称)」。いずれも「実践力」を高めることに重きを置き、教室外での「実学教育」を充実させます。例えば、両学科ともに1年次に「基礎能力形成科目」や「情報基礎科目」などで基礎を固めた上で、社会の課題を発見し、解決策を探る力を養うためのフィールドワークや機材を駆使した実験実習に力を入れるなどして学科の専門性をより高めていきます。その他にも、地域での課題発見・解決に向けて取り組むプロジェクトやボランティア活動、学生の将来目標に合わせた「インターンシップ」や資格取得など、多彩なスタイルの授業を通じて、「自ら考え、行動する力」を身につけます。

 静岡産業大学は1994年4月に経営学部を磐田キャンパスに開設して、この春に25周年を迎えます。これまで地元の行政、企業などの協力によって開講している「冠講座」や幼時から小学生を対象にした「キッズスクール」、各種スポーツ研究センターが主催するイベント運営など「実学教育」に力を入れており、新学部においても、これらを継承し、さらに充実させていきたいとしています。

スポーツの価値を解き放つ
~SSUカレッジスポーツの挑戦~

 新学部は、日本のカレッジスポーツが抱える問題の解決も目指します。まず、設立を間近に控えた一般社団法人大学スポーツ協会UNIVAS(日本版NCAA)※1への参画も検討しており、将来的には法人化も視野に入れた静岡版NCAAの設立を目指しています。ここでは各クラブに大学組織の一員である部長を置くのが特長で、大学の理念やビジョンに沿って強化や活動を行い、大学全体のリソースを競技力の向上に活用します。また“する”だけでなく“見る”“支える”、さらには“広報する”価値や楽しさにも着目。地域との交流を活発にしてサポーターを増やし、学生を大会運営や広報活動に巻き込むことで興行面での魅力を高めるなど、多面的な展開を計画しています。

 また、アスリートとして活躍する学生たちの将来設計も重要な課題と捉え、就職・キャリア支援にも力を入れるなど、いわゆるデュアルキャリア※2の育成のために特別プログラムの充実を図っています。スポーツ文化の拠点として大学ほど適した施設はないことから、静岡県、磐田市と連携したスポーツの拠点作りにも力を入れ、カレッジスポーツ、スポーツビジネスで静岡県、磐田市を盛り立てる人材の育成、輩出を目指します。

※1 これまでアマチュア中心に運営されてきた日本のカレッジスポーツを、NCAAを模した収益を上げられる組織へと、抜本的に改革しようという試み。NCAAは全米大学運動協会。
※2 アスリートの社会人としてのキャリアを、アスリートを終えてからのセカンドキャリアとしてとらえるのではなく、アスリートとしてのキャリア形成と、社会人としてのキャリア形成の双方に同時に取り組むという考え方に基づく。

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