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先輩が解説する2025科学の甲子園全国大会、筆記競技、実技競技 – 数学

科学の甲子園, 数学





筆記競技 数学(平方数と鳩の巣原理/3D 三目並べ)




筆記競技 数学

【第 9 問】

平方数の性質と鳩の巣原理による証明—平方数とは、ある整数を 2 乗して得られる数のことを指す。これは「図形数」(一定の規則で図形状に並べられた点の個数として表される自然数の総称)としても知られており,紀元前から興味の対象とされてきた。

《問 1》

自然数が平方数となるための必要十分条件,すなわち「(正の)約数の個数が奇数である自然数は平方数に限る」という古典的な命題の証明が出題された。

一般に,自然数を素因数分解して \(n = p_1^{a_1}p_2^{a_2}\dots p_k^{a_k}\) と書くと,約数の個数は \((a_1+1)(a_2+1)\dots(a_k+1)\) に等しい。

また,平方数を素因数分解すると,各素因数の指数がすべて偶数になることを用いて証明できる。

この問題を別の視点から眺めてみよう。自然数 \(n\) に対して,\(\sqrt{n}\) 以下の自然数 \(a\) が約数であったとする。このとき \(n/a\) も約数なので,これを \(b\) とおくと,\(b\) は \(\sqrt{n}\) 以上の自然数となる。つまり,約数全体は掛け合わせると \(n\) になる対 \((a,b)\) の集合で構成される。

もし \(\sqrt{n}\) が自然数(すなわち \(n\) が平方数)であれば \(a=b=\sqrt{n}\) となり,約数の個数が奇数になることが直観的にわかる。

また,\(\sqrt{n}\) 以下の素数で \(n\) を割り切れない場合,\(n\) は素数である(試し割り法)。

《問 2》

問 3 を解くための誘導問題。条件を満たす自然数をどのように構成するかがカギとなる。

条件〈1〉より素因数は 2, 3, 5 のみなので,すべて \(2^x 3^y 5^z\) の形で書ける数だけを考える。

条件〈2〉より,どの異なる 2 数を掛けても平方数とならないようにする必要があるため,具体的な数ではなく指数の偶奇に注目して素因数分解の形で考察した方が効率的である。

《問 3》

問 2 では異なる 8 個の自然数で条件を満たす組を構成できたが,9 個に増やすと必ず平方数になる組が存在する。これは鳩の巣原理を用いて示す。

鳩の巣原理とは「m 個の鳩の巣に m+1 羽の鳩が入ると,どこかの巣に 2 羽以上入る」という初等的事実である。ここでは鳩=9 個の自然数,鳩の巣=各数の指数部の偶奇タイプ(全部で 8 通り)とみなす。

指数部 \((x,y,z)\) の偶奇による 8 通りのタイプ分けに 9 個の数を入れれば,同じタイプが 2 つ以上現れ,その積は平方数になる。


【第 10 問】

三目並べ(○×ゲーム, Tic-Tac-Toe)を 3 次元に拡張したパズルに関する問題が出題された。

《問 1》

3×3 のマス目で四隅のボールの色が決まっているとき,残り 5 マスをどのように選んでも三目並びのない配置を作れるかを考える。解き方はナンプレの Naked Single に相当する手筋である。

《問 2》

3 次元拡張(三層構造)で,一番上の層が「タイプ C」なら必ず三目並びが存在することを示す。空欄補充形式の誘導問題。

《問 3》

さらに一般化して 3×3×3 の部屋で,いかなる配置でも三目並びが生じることを証明する。問 1 で 4 タイプ中 2 タイプは NG であったため,各層はタイプ B または C に限られるが,表面がタイプ C だと問 2 に帰着してアウト。従って表面はタイプ B となり,頂点 8 部屋の色が 2 パターンに絞られる。ここから問 2 の議論を繰り返す。

足利大学 非常勤講師 中川耕一

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