コミュニケーション

大学英語教育改革座談会
大学の共通教育「英語」、その改革について考える

11月3日、学士会館にて

共通教育にも力を入れている大学を目指そう


ご出席の先生方

グローバル化を急ぐ日本の大学。
その象徴が国のリーダーシップで進むSGH事業。
前後してグローバル人材育成に特化した学部・学科の開設や、
既存の学問をグローバルな視野から捉えなおし、
グローバルに通用するスペシャリスト育成を目的にした教育組織への転換も相継ぐ。
ただその多くは、一部を改革することで大学全体への波及効果を狙ったもので、
それ以外の教育組織に属する学生の教育が今後の課題とも言える。
そのカギを握るのが共通教育の英語教育。
その現場で改革を担う、あるいは担ってこられた先生方と、
そのサポートに力を入れる民間事業者を代表して、
(株)GLOBAL VISION 代表取締役社長の田中良一氏にご参加いただき、
その現状と課題、今後の展望を語っていただいた。


改革の現状
カリキュラム、教材、eラーニングと実施体制

私立大学では

明星大学

内田:1、2年生対象に週1回、ネイティブと日本人による二種類の授業を行っている。10年程前からは、この二つの科目を同じ日に1限・2限または3限・4限と縦に並べ180分集中的に行っている。学生にとっては、1日で英語の授業が受けられるので好都合だが、教育効果の観点からは分散させたいという意見も強い。そもそも明星大学の共通教育のカリキュラムはとても複雑。例えば、教育学部生の多くは、幼・小・中・高の教員資格を取ろうと、授業をたくさん取るからこの方が都合がよい。eラーニングは一部の科目でやっているが実施上の課題が少なくない。

金丸:課題をしっかりとやらせるのが一番大変だ。 内田:次期改革に向けて組織的な準備が始まっているが、そこも視野に入れたい。テキストは統一したものを使っている。


昭和女子大学

司会:昭和女子大学は改革が一段落したとお聞きするが。

三宅:昨年までの5年間の文部科学省の「グローバル人材育成事業」(2012年から)で唯一のS評価をもらった。非常勤の先生方は約40名と少ないが、成功したのはまずFDをしっかりしたこと。教え方や評価など細かいところまで、最低でも年2回、非常勤講師説明会・セミナーを開いて研修している。

もう一つは大学としての方針をしっかり伝えたこと。大学全体として目指すところから、1年間で到達させてほしい目標スコアまで。統一のテキスト、シラバス、同じ数値目標の下で取り組むことで一体感が生まれ、モチベーションも上がる。それが学生に伝わってきているのではないか。

塩沢:目標スコアはTOEICなどの?

三宅:何点と言うよりは、現状から何点プラスというようにしている。未達成だからと留年させることはない。あくまでも成績評価の参考。eラーニングの修了率は97から98%。月一で学習状況を一覧にして非常勤の先生方にお配りする。していない学生は一目瞭然で、先生が声掛けをする。eラーニングの課題は週に2レッスンで、年間60レッスン。

江川:量は一般的?

三宅:少ないかもしれないが、授業以外で学習する姿勢が身についたと学生は言ってくれる。スマホ対応の教材を選び、電車の中など、空き時間にどこでもいいから取組むよう意識付けしている。

司会:eラーニングも評価の対象に?

三宅:一年では必修科目の宿題として全員、必ず取り組んでもらう。平常点として加算している。

金丸:本学のやり方にかなり近い。オンラインの学習支援システムGORILLAも必修にしている。

三宅:本来は自発的に取組むべきことだと思うが、放っておくとやらなくなる学生もいる。英語力は英語に触れる機会を増やせば増やすほど伸びるから、助成事業終了後も大学の予算で続けていることは多い。

金丸:eラーニングもその予算の中から?

三宅:いいえ、受益者負担。

田中:受益者負担の方が使用率は上がるようだが。

川越:それはそう思う。 三宅:「自分たちで払ってるんですよ」と、プレッシャーをかけやすい。


文教大学

塩沢:国際学部は1990年、第一次国際化を背景に開設。90年代から少人数のCALL教室を導入し、特にITを入れるなど改革を続けてきた。授業は1年次で週4回。1年次で集中的にやって、2年次では必修1コマ。3年次でもう1コマ。必修が10コマで、うち1年で8単位。2年の春学期には希望者対象の英語圏とタイへの短期留学があり、1セメスター英語で授業を受ける。参加しない学生には、英語の文献などを読む応用ゼミを取ってもらう。秋学期の1コマは必修でさらに引き上げを図り、3年の前期にもう1コマ(必修)で、就活するまでに力が落ちないよう配慮している。

eラーニングは2000年代初頭から導入。CASECでクラス分けし、その後も年1回、学期末に力をチェックしてもらっている。1年の必修授業の中にネットアカデミーを教材として導入。1クラス30人弱で6段階にレベル分け。下のクラスは少人数にして目が行き届くようにしている。授業や授業外でやらせるのを先生方がモニターして結果を全員に見せる。成績にも加味するから1年次にはかなり伸びる。短期留学に参加するとさらに伸びるが、問題はその後。そこで今は、1年の授業を少し減らして上の学年に移すことなどを検討している。

1年次では、4コマ中2コマがネイティブによるもので、スピーキングとライティング中心、残り2コマが日本人によるものでリスニングとリーディングが中心だ。さらにESP(English for Specific Purposes)などを選択科目として用意。単位数は第2外国語を含めて全部で18単位。英語については、かなり多くの学生が選択を4から6単位、あるいは全て取っている。最近は在学中、あるいは卒業後すぐにフルブライトで渡米して、向こうの大学で日本語を教える学生も出てきた。

川越:すごい。

塩沢:全員とは言えないが、トップの子たちはすごく伸びていると実感している。

川越:経済学科や観光学科も週4? 塩沢:国際学部ではそうです。学年定員は250名。英語教員は全部で25人。専任は5人でその他が非常勤。採用面接は念入りに行っているが、シラバスを統一にして、オブザベーションウィークに専任が授業を覗いてチェックしている。学生も厳しい。講読ばかりだと黙っていない。


神戸女学院大学

川越:《英語の女学院》と言われてきたが、今は他大学との厳しい競争に晒されている。文学、音楽、人間科学の3学部5学科体制。2013年に私が卒業生ということで戻り、英文学科を除く4学科の英語教育改革を担当している。カリキュラムを全面的に改訂し、TOEICの点を上げることとESPの充実の2本立てにした。本学をテーマにしたオリジナルテキストも作成した。他に英語学習についてなんでも記録しておける英語手帳もある。IP-TOEICは入学時と1年の12月、2年の7月に3回受検。IP-TOEICの結果は必修科目の成績の30%で、毎週単語テストを行うなど徹底している。英語を専門とする学科以外の全国平均は、ほとんど上がっていないと聞いているが、本学では入学から15ケ月で84点上がった。

1学年(英文学科を除く)500人で、3名の専任(日本人2名、外国人1名)で非常勤50名(日本人・外国人が半々)をコーディネートしている。シラバス、評価基準は統一で、前期、後期それぞれの終了後に集まり反省会を開く。3回のTOEIC受検費用は授業料の中に組み込まれている。eラーニングはATRとEnglishCentralを入れているが、前者は大学の費用で入れ、後者は教科書同様、学生にカードを買ってもらっている。

このほかOSAKA ENGLISH VILLAGEに1年生全員を送り込んだりもしている。学生のモチベーションはかなり上がる。英語検定懸賞コンペティションや英語スピーチコンテストも開いている。

今後はこのような取組の対象を1、2年生から3、4年生に広げたい。2年の前期でTOEICの学習が終わると3、4年で力が落ちる。4年は就活があるとしても、就職にTOEICは欠かせないから少なくとも3年生までは力をつけさせたい。ただ、専門科目との兼ね合いは難題だ。

司会:1,2年の授業は週4回ですね。

川越:はい、必修が4回です。他大学ではほとんど週2回だと思う。そのために卒業単位は124から128に増やしている。

司会:志願者の獲得にはつながっている?

川越:そこまではわからないが、『生徒を伸ばしてくれる大学100』(大学通信社)では、全国で29位、関西では5位、女子大では津田塾大学に次いで2位だ。英語教育改革も貢献できたと思っている。

江川:志願者獲得はPR次第のところもある。


国立大学では

宇都宮大学

江川:私は共通教育改革のため2007年度後期に宇都宮大学に招かれ、英語教育改革を推進してきた。最初に文部科学省に出した改革プランが高く評価され、潤沢な資金の獲得に成功。2009年度から「English Program of Utsunomiya University (EPUU)」と呼ばれる新プログラムをスタートさせた。4年が終了した時点で、大学英語教育学会(JACET)より、JACET賞(実践賞)をいただき、その後も改革を続けて、プログラムは現在10年目である。EPUUの特徴は、以下の5点。

  1. テーマは「浴びる英語」:学生に日常的にたくさんの英語を「浴びさせる」ため、大学の施設設備環境を整えた。コンピューター制御の英語学習用CALLラボを3室、8000冊の難易度別リーディング教材を備えたReadingラボ、欧米の映画DVD1300枚所蔵のDVDラボ、ワイドスクリーンのシアター、英語ネイティブ教員から1対1の指導を受けるクリニック等々。
  2. TESOL教員団による企画運営:日本人教員に関しては、海外の大学院で英語教授法(TESOL)を修得した教員のみを採用。現在、在外経験の平均は10年以上で、専任助教7人、准教授2人、教授1人が、グループによる企画運営をしている。他に非常勤の英語ネイティブ教員が多数いるが、彼らについてはプログラムの方針が徹底するよう、ネイティブ准教授が管理運営を担っている。
  3. 習熟度別授業、特に充実したHonors Program:TOEICにより習熟度別クラスを編成。国際学部がある関係もあって、極めて英語力の高い学生が多数いる。そのような学生に対しては、Honors Programにより、通常学生と一線を画す教育を行っている。
  4. 映画英語の重視:「英語嫌いを英語好きに、好きな学生はもっと好きに」する方策の一つとして、積極的に授業教材として映画を採り入れ、そのための施設を新設した。
  5. 「学生目線」の重視:全ての面において、とにかく、学生が楽しんで英語を学べるよう工夫した。授業は毎回アクティビティ中心に行っている。それから、EPUU入門の『PATHWAYS』、教員の異文化体験を漫画仕立てにした『Culture Shock』、身近な出来事について英語で読む新聞『EPUU TIMES』など、プログラムのオリジナル教材を数々作成した。専門英語に関しても、「教養英語プログラムにおける専門英語教育」のあるべき姿を検討し、2年次科目に学部別English for Academic Purposes (EAP)科目を設置、学部別教科書『ACE』を作成した。

川越:すごい。

江川:宇都宮大学は5学部、1学年1000名で、幸いプログラム運営には丁度良い規模。これ以上学生が多いと、統一して何かをするのが難しくなると思う。

司会:具体的なカリキュラムは?

江川:改正は学内の反対が強く難航したが、最終的にもらえたのは1、2年合わせて4コマ。それを2―2に配置せず、3―1にした。1年次に3コマ入れるのは、時間割作成が非常に大変だったが。2コマが日本人教員担当で、1コマが英語ネイティブ教員。つまり、学生全員が外国人に習えるようにした。2年次は1コマをほぼネイティブが教える。

更に夏には、約20人をアメリカの州立大学付属の英語学校に送り、1クラスに日本人一人だけという環境で勉強させる「EPUU留学」や、TOEIC650点以上のHonors Studentだけの合宿「Honors Camp」も実施した。 これらの様々な取り組みの結果、EPUUの学生評価は極めて高い。開始当初の1年生1000人の満足度平均が4.52(5点満点)、徐々に上がって現在は4.75である。


京都大学

司会:1学年が3,000名近い京都大学では?

金丸:京都大学の英語教育は、少し前までは批判の対象になったこともある教養英語だったが、これまでに二度改革が行われて、今は2回目の改革が一段落したところ。

1回目の改革(平成17年度)では、国立大学として初めてEAP(学術英語:English for academic purposes)を導入したが、教養学部を引き継いだ総合人間学部と、全学教育を担当するために新設された高等教育開発推進機構との連携が十分に取れず、うまく進まなかった。

平成25年に2度目の改革がスタート。新たに発足した国際高等教育院が、総合人間学部の先生方に代わってカリキュラムの企画や運営に責任を持ち、科目の設計から、単位習得状況の管理まで幅広くマネジメントすることになった。英語はEAPの中身をもう少しはっきりさせ、リーディングとライティングにリスニングも加えた。

リーディングは総合人間学部の先生に主に担当してもらうが、教科書はたいていの場合、各学部からの「こういう《教養》を身につけさせたい」との要望を受けて総合人間学部の教員が提案し、学部と協議して決める。たとえば、理学部ではワトソン・クリックのワトソンによる『The Double Helix』や『Silence Spring』、農学部では『Astrobiology』、医学部ではガンにかかった科学者が、毎週1回家族やこれまでの思い出などについて話すのをまとめた『Tuesdays with Morrie』といった具合。

江川:いわゆる教養英語用に出版社が作成したテキストではなく…。意外。文字通りのリーディングですね。

川越:理系的なことを教えるのは、内容的に難しくない?

金丸:そこについても相談。もちろん英語の専門家としてのプライドもあるから、扱う内容が決まれば教える側も必死だ。

ライティングは全学部統一のシラバスで達成目標も同じ。テストスコアなどの数値ではなく、Can-Doリストを作った。統一教科書は三種類。クラスは1クラス40人が標準だったものを20人にして150クラス設けた。前期と後期で、日本人の教員と外国人の教員とを入れ替え、公平性を保ちつつ、英語による授業にも慣れる仕組みにした。FDもしっかりやって組織的に運営している。リスニングは、eラーニングシステムGORILLAを独自に開発し、学習する教材もオリジナルのものを用意した。学習状況を測るため、専任教員3人でテスト問題を毎回6、7種類作って、学期中に4回、毎月1回先生方に授業中に実施してもらっている。採点と結果の通知についても、事務の協力を得て専任教員のみで行っている。成績はライティング、語彙、リスニングの3つの観点で評価している。ライティングについては、前期が英語のエッセイ300~500語、後期が1,000~1,500語の英語レポートを必須としている。語彙と合わせて、前期70点分、後期60点分が担当の先生の裁量範囲となる。リスニングについては、テストなどの結果を反映して30点分を先生方と学生に通知している。後期は20点分となるが、12月に実施するTOEFL ITPの一斉テストの結果を反映した20点を加えている。

司会:eラーニングについてはMy ET(英語用のスピーキング練習ソフトウェア:My English Tutor)をお使い?

金丸:現在は課外での学習に活用してもらっている。My ETの利用対象は大学院生も含めた全学生としている。My ETで学習した成果を活かして、英語スピーチコンテストなども実施している。

田中:2年前、My ETの世界大会へ参加した学生さんもおられた。

金丸:英語のカリキュラムについては、それまでの「英語Ⅰ」「英語Ⅱ」の2年一貫プログラムから、1年生だけをクラス指定の必修科目とし、2年生は選択必修として英語の枠を広げ、3つのカテゴリーに分かれたE科目を新設した。E1は英文学や言語学を中心に、主に総合人間学部の先生方の専門を中心とした英書講読が中心。E2は、《外国人教員100人雇用》で話題になった外国人教員(現在80数名)による英語による教養・共通科目の授業だ。現在は300科目ほど提供していて、それだけで専門以外の単位を揃えることもできる。留学生の多くも履修しているから海外の大学の講義のようで、学内留学的な位置付けだ。モチベーションが高く1年生で受講している学生もいるし、その中から実際に海外へ留学する学生も出ている。E3は技能中心ということで、プレゼンを中心としたスピーキングなどの授業はこの段階の選択でとれるようにしてある。大学院の共通科目としても提供していて、院生も混ざって学んでいる。

司会:GORILLAの学習状況は? 金丸:今年から学習時間についても記録を取るようにしたが、予想に反して学生はしっかりと勉強している。一週間で30分くらいかと思っていたが、実際には1時間半から2時間程度。学習時間が少し多すぎないかと心配されたぐらいだ。一方で、自由の学風と聞いて入ってきた学生からは、全く自由がないと恨まれている一面もある。


高校へのメッセージ
改革にも目を向けよう

司会:高校へ向けての発信は?

三宅:オープンキャンパスが大きいと思う。英語を専門とする学部・学科では、英語教育に対して保護者の関心が高いのは当然だが、そうでないところでも関心が高まっていると感じる。「英語は専門ではないが、これだけしっかりやっています」と説明すると安心する方が多いようだ。

司会:そういう取組を紹介するのが今日の趣旨。社会からの要請については?

田中:前職では企業が主な対象だったが、企業は今どんどんグローバル化していて、いい会社に就職しても英語がしゃべれないと上に上がれないし、下手をすれば本社にもいられないような時代だ。理系は最低限の英語でもなんとかなるかもしれないが。求められる英語力は、文系・理系、学部、また目指すキャリアによっても違うから、大学は学生の目標に応じて個別に対応してほしい。学生も、1年生ぐらいである程度の将来目標は持っておきたい。他のアジアの国は本気だ。韓国財閥では、TOEICで900点ないとエントリーシートが書けないところもある。日本の大学には、日本の子どもたちをグローバル化するにはどうすればいいのかをもっと真剣に考えてほしい。

また英語は練習量、トレーニングも大事で、そのためのパターンプラクティスは欠かせない。ゆっくり考えれば話せても実際のコミュニケーションの場面では待ってくれない。今、My ETの上にそれを補完するパターン学習を入れたFANGOで開発している。発音だけでなくリズム、ピッチ、強弱についても、どこが悪いかがわかるように特許を取っている。

川越:ちょうどMy ETのモニターを始めたところ。上手に点数が出る。

内田:1学年2000人で学生の英語力のばらつきはとても大きい。英検の上位級から中3程度の英語すら怪しい学生もいる。10数年前の全学英語教育改革で統一教科書、習熟度授業を導入したが、更なる改革を目指している。教育学部などは教科科目の必修がとても多いから、eラーニング等を入れ、授業外でも頑張る仕組みも必要かもしれない。

田中:日本のEFL環境の中で、AI、ITをどう使うかも考えていかねばならない時代だ。

三宅:本学の総合教育センターは、英語を専門としない1学年約1200人を対象にマネジメントしている。全員が英語好きではないし、英語が嫌いで、英語を仕事で使うことはないと思っている学生も多い。しかし卒業して職場に入れば英語が求められることもある。一方で、英語の先生には社会経験のない人もいるため、採用時には実際に英語を使って仕事をしてきたかも見ている。

塩沢:全学はキャンパスが2つで1学年2000人。共通教育の英語はなく、各学部独自の英語教育を行っていて差がある。

金丸:大学全体の取組は?

塩沢:両キャンパスでスピーチコンテストをしたり、国際学部発で隔月で研究会を開いたりして意識付けを図っている。英語教育でも全人的な教育を優先させたいと、検定試験に関しては慎重な意見が多い。

司会:足立キャンパス移転に伴う改革は?

塩沢:詳細は検討中だが、学部全体のカリキュラムを変える。語学の比重は変えずに、より地域、世界で即戦力としてグローバルに活躍できる人を育成するといったイメージか。地域との連携についてもグローバルや共生の概念が強調されるだろう。観光学科はもっと英語の力をつけビジネス寄りにしたい。学部全体では専門科目と、英語の授業時数とのバランスのとり方も一つの課題だ。

川越:かつての≪英語の女学院≫を是非取り戻したいと頑張っている。

江川:日本の大学の英語教育に関する認識は、大学によりあまりにも差がある。例えば、習熟度別授業一つをとっても、容易に導入できる大学と、教員の反対が強くてできない大学がある。近年、入学してくる学生の英語習熟度のばらつきが激しいのは歴然としているのだが、その対策に手をこまねいている大学が依然として多い。10年前の宇都宮大学の改革当時と違い、今は行政が旗を振りバックアップもしてくれているのだから、予算はともかく、まだ改革してないところはすぐにでもやるべきだと思う。

三宅:お金がなくてもできることはある。統一テキスト、シラバスなど簡単にできるところから始めればいい。

江川:改革を阻むもう一つの理由は、コーディネーター役として頑張る人材の不足。コーディネーター個人の負担も大き過ぎる。手が足りない点は、業者さんに上手に入っていただくのも一つの方法かもしれない。

金丸:京都大学の場合は、全体の目標を関係者のコンセンサスを取りながら進めてきたことが大きかったと思う。トップダウンだけでは難しい。関係者が納得することで英語の先生方の協力も得られた。もう1点は、英語教育を全体としてコントロールするコーディネーター役を設けたこと。私たち専任がそれらを任されていて、その立場からお話しをする機会も増えた。おかげで「京都大学の教育は放ったらかしではなかったんだ」と理解いただき始めている。

三宅:コーディネーター同士のつながりも大事ですね。

金丸:他の大学でも「似たところがあるな」とか。

司会:こういう視点も受験生には持っておいてほしい。 金丸:「組織による教育」についてはもっと目を向けて欲しいですね。

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