
経済学部
神戸国際高等学校出身
西原 舞さん
教育学部
清風南海高等学校出身
大山 亮さん
工学部建築学科
大阪府立北野高等学校出身
篭島 瑶さん
総合人間学部(文)
兵庫県立大学附属高等学校出身
昨年度で三回目となった京都大学の特色入試ですが、年々受験者は増加し、試験内容にも変化が起こっているようです。今回は、そんな狭き門を潜り抜けた4名の合格者たちに話を聞いてみました。
特色入試を受けようと思った
きっかけは何でしたか?
室口:特色入試の「オモロイ人探してます」というキャッチコピーに惹かれたのが最初のきっかけです。あのポスターいいですよね。私、“オモロイ”ことが好きなんです。
篭島:私はもともと京大を受験するつもりはなかったのですが、同じく特色入試を受験しようとしていた友達や高校の先生に強く勧められて、特色入試なら前期試験は別の大学を受けられるのでそれならいいかなと思い、幅広く学べる総合人間学部の受験を決めました。
大山:僕は高2の時点では教育に興味があり、二次試験の科目である小論文にも自信があったので教育学部の特色を考えていました。それでも、高3の夏になってやっぱりずっとやりたかった建築を勉強したい、と思い始めました。それを親に相談したところ、「とりあえず受けてみたら」と言われたので受験しました。
西原:一番の理由は、特色を受けることで合格のチャンスが増えると思ったので。あと、高校のコースへの貢献も理由の一つです。私は、通っていた高校がSGH(スーパーグローバルハイスクール)に認定され、そのグローバルコースの一期生でした。初めての試みには校内の批判もあり、同期で選択した人も年々減っていました。私はこれに危機感を覚え、自分が特色入試に合格することで少しでもコースの評価を上げられるのではないかと考えました。
学びの設計書二次試験について
西原:教育学部は学びの設計書の分量が多く、他学部と共通の高校で頑張ったこと、大学でやりたいこと、大学卒業後にやりたいことに加えて、自分の年表を書き、さらにポートフォリオまで作らなければいけませんでした。一般入試の京大の二次試験の対策もある中でその準備に追われてしまったので、これで落ちたらどうしよう、と不安に感じながら作成していました。大学でやりたいこととしては、教育とメディアやジェンダー論について書きました。グローバルコースで各国の学生とワークライフバランスについてパネルディスカッションをした経験から、女性の立場の文化差について興味を持ち、京大に多い韓国や中国からの留学生から学びたいと思っています。
二次試験は筆記試験と面接でした。筆記試験の対策としては、ひたすら小論文を解いたり、国語の教科書に載っている人の思想をまとめたりして、大変だったと記憶しています。実際に受けてみると、最後の問題は前年度までと傾向が異なり、「失敗というテーマでプレゼンの原稿をつくる」というものでした。これを見た時、「失敗してもいいよ」と言われているようで粋だなあと感じ、一気に緊張がほぐれたので、高校でもやってきたプレゼンの経験を存分に生かして楽しんで書くことができました。
面接の対策としては、教育学部の教授の研究していることを調べるくらいしかしておらず、話すことはもともと好きだったのでいけるだろうと思い小論文の対策に専念していました。しかし本番ではこれまでの傾向とは異なる質問が飛んで来たり、学びの設計書の論理性について細かく突っ込まれたりしてとても焦りましたが、落とすための面接だと考えてなんとか話しきりました。
大山:工学部は二次試験がなく学びの設計書とセンター試験の点数だけで決まります。受験を決めたのが「学びの設計書」の提出日の一週間前だったので、たくさんの方に協力をいただきつつ、一週間夜通し考え抜いて大慌てで書き上げましたね。(笑)
内容は、高3の夏まで野球部でキャプテンをしていたことと、高2の秋に科学の甲子園に出場したことを書きました。科学の甲子園ではプラスチックの棒で橋をつくるという課題に挑戦したのですが、事前にメンバーと行った実験や当日のトラブルに対する試行錯誤が楽しく、そこでものづくりや建築に興味を持ったことが建築学科を志望する大きなきっかけになりました。
また、昔から世の中を活気づけたいと思っていましたから、例えば学校の教室や黒板の設計を変えることでつまらなそうに授業を受けている人を楽しくさせ、自主的に参加させる。建築で人々が生き生きと生活できるような「場」をつくることで、世の中を活気づけられるのではないか。そのことを大学でやりたいこととして書きました。
普段からこういうものがあったらいいなと思いついたものをまとめてはいましたが、改めて学びの設計書に書くにあたって先生方に相談したところ、すでに実現されている物も多く、オリジナリティを表現するのには苦労しました。でも、そのおかげで自分のやりたいことを見つめ直せたので、良い経験だったなと思っています。
篭島:総合人間学部の倍率はとても高く受かるはずがないと考えていたので二次試験の対策は全くしていませんでした。比較的力を入れたのは学びの設計書。400字という少ない字数でまとめるのは難しかったですが、高校で頑張ったこととして水泳部では珍しい女子キャプテンとして男女両方の部員をまとめ上げる大変さなどを書きました。
大学でやりたいことは具体的には決まっていなかったので、当時ずっと考えていた、環境に関わらず幸せや不幸を感じる人間の心理状況や、満足できるできないの差は何なのか、つまるところ「幸せとは何か」についてひたすらまとめました。普段から母と結論が出ないような話をするのが好きなのですが、今回も母とたっぷりと議論をし、浮かんできた考えを整えて書きました。
二次試験は全く緊張せず無対策で文系総合問題と理系総合問題の二科目を受けました。理系の方はわからないなりに全て解答用紙を埋めたのですが、文系の方の小論文で「生きがいの変容」についての文章が出たので、学びの設計書の自分のテーマと似ているし、ここで理系の分も取り戻そうと意気込みながら、時間がない中書ききりました。
室口:私は実家やその周りが農家なのですが、その経営を見るうちに、多くの農家は経営の知識がないまま作物を育てており、しかも国による支援も不足しているため経営不振に陥っていることに気づきました。六次産業化と銘打った政策等も出されていますが、農家の視点から見ると、職人肌である農家に、専門的な知識が必要とされる経営も任せるのは無理があると感じていました。そこで学びの設計書にこの問題についてある程度進んでいる農学的アプローチではなく経済的な側面から解決したいと思い、経済学部を志望した、と書きました。高校時代にスイスに留学に行って現地の大規模な農業に触れたことも、日本の農業問題について考えるきっかけになりましたね。
センター試験前で、ほぼその勉強をしていたため、二次試験の小論文対策はあまりしていませんでしたが、協力的な学校の先生が持ってきてくれた模擬試験をやったり、論理展開の定型文を考えたりしていました。試験が終わった瞬間、「落ちた!」と思ったので、本番の内容は全然覚えていません…。(笑)
合格後の気持ちや周りの反応
大山:合格後、教授から個別で期待しているなどの言葉はなかったですね…。
西原:面接で良く反応をしてくれた教授の英語の授業を受けているのですが、そこでCongratulations!と言ってもらえたことはあります。覚えててもらえて嬉しかったですね。
篭島:私は皆さんと違って一般では京大以外を受けようと思っていたので、やっぱり一般入試生に対する引け目はあります。本当に受かるなんて思ってなかったので…。合格発表の日は、間違っているんじゃないかと思って電話で何度も確認しました。その後も「やっぱりドッキリでした!」と言われてもいいように、一般入試の勉強をちまちま続けていて、大学から書類が届き始めてやっと信じました。(笑)
室口:わかります。全然信じられなかったですし、急に空いた時間に何をしたらいいのかわからなくなっていました。
篭島:こんなにあっさり入ってしまっていいのかとしばらく呆けてしまって、喜びは皆無でした。周りの人たちはとても喜んでくれたんですけどね。
西原:私は合格が決まったときは嬉しかったですし、達成感もありましたよ!
篭島:そこはやっぱり準備にかけた時間の差ですかね。私は何の対策もせず受けてしまったので…。ですが今となっては京都大学に入れて本当によかったなと思っています。
大山:僕も書類を出し終わった状態からいきなり合格をもらったので、「え、これで終わり?」感はありました。でも張りつめていたものが無くなり、安心と余裕ができたため、友人の受験対策を手伝ったり有名な建築を見に行ったりして有意義な時間を過ごせたのでよかったです。
室口:手持無沙汰で掃除機をかけていた私とは反対の過ごし方をしている…。
大学に入って
篭島:私は幸せについてだけを学びたかったわけではないので、入学してからは将来の選択肢を広げていっています。心理学の脳科学的アプローチも面白いなと思っていて、大学で理系の知識も身に着けられたらいいなと。
大山:建築は後期から本格的に図面を書いたり模型をつくったりする授業が始まるので、それを楽しみにしています。ただ、今は部活を始めたばかりなので、あまり建築のことを考える時間がありません。
西原:教育の入門科目でグループ研究をしていますが、今はトラウマ絵本について調べようとしています。自分たちの興味があることについて学べるのは楽しいですね。あと、昔からお金を稼ぐことが大事だと無意識に考えていたのですが、教育というアカデミックな現場に身を置くことで、お金が全てではないという価値観にも気づかされました。
室口:経済は入門科目が多く、興味があることをやれるゼミは二回生からなので、それを楽しみにしています。また、アメフト部のマネージャーをしているのですが、高校生の勧誘などの人集めやマネジメントも面白くなってきています。