コミュニケーション

大学の学びの積み重ねが、就業力を高める

法政大学キャリアセンターでは、2016年度に延べ20,500件の個別相談に対応。キャリア教育から就職支援までのシームレスな取組で《自由を生き抜く実践知》を養う。

2017年度も学生の売り手市場で終わった就職戦線。その中での各大学の就職支援は、今春の入試で志願者数を大きく伸ばし、出口である就職実績でも躍進が見られる法政大学。「大規模大学でありながら、きめ細かな就職支援で、一人ひとりの学生が希望する企業へ就職できるよう、就職率100%を目指す」というキャリアセンター長の竹内淑恵先生と、事務部長の藤野吉成さんに、その取組、改革についてお聞きしました。

竹内 淑恵先生

竹内 淑恵先生

法政大学キャリアセンター長(経営学部教授)

藤野 吉成さん

藤野 吉成さん

キャリアセンター事務部長

≪就職に強い法政≫であり続けるために

藤野: 2017年度の各大学の就職実績は堅調で、本学も昨年度を上回る実績をあげられたと満足しています。ただ、全体の求人倍率も昨年より高いとの分析もある反面、従業員5,000名以上の大企業では、求人倍率は前年の0.59倍から0.39倍(リクルートワークス調べ)へと下がっています。各社とも激化するグローバル競争に対応すべく経営の効率化を進めていて、新卒採用に対する考え方も変化しているようです。 大企業に学生の希望が集中しやすいという現在の就活生の志向の問題もあり、大企業を目指そうと考えている学生にはしっかりとした準備が必要です。反対に、知名度こそ劣るものの、技術で引けを取らない優良企業で、採用意欲の高い企業を我々は良くお見掛けしますので、そうした企業の魅力について学生に発信していく必要性を感じています。 本学のような毎年卒業生が6,000人を超える大規模な総合大学にとっては、きめ細かな就職指導として個別相談においてどれだけの学生に対応できるかが、就職率を高める鍵になると言っても過言ではありません。2016年度に当センターがこなした相談件数は大学院生も含め、20,500件にものぼります。2017年度は相談を担当する職員の業務効率向上に取り組み、待ち時間を40%短縮したことで、件数を50%引き上げることができました。 来年度へ向けては、繁忙期となる11月から3月にかけて職員の増員を検討するとともに、この11月からは10~20名単位のワーク型の講座をスタートさせます。就職活動が本格化する春の段階でも、「就活とは」「何のために仕事をするのか」「自分の適性や強みは何か」などから指導を始めなければならないケースもありますから、エントリーシートの書き方、業界・企業研究、自己分析などについての指導は早めに済ませ、採用試験開始時期での個別相談対応の効率を高めたいからです。もちろん個別相談に来られない学生の便宜を図る目的もあります。

竹内: 正課教育については、これまで教育開発支援機構という組織のもとで行っていた1年次の教養科目(大学の学びとは)、(キャリアとは)について学ぶ「キャリア教育プログラム」を、来年度から本センターに移管し、より一層の充実を図ります。キャリア教育の本来の目的は、採用状況と関係なく、学生が卒業後、社会の中で力強く生き抜いていくために必要な力を身につけてもらうことですから、キャリアや就業についての教育、インターンシップ、就職支援について、その入口から出口までをシームレスに、教員と職員が一丸となって担って行くのがキャリアセンターのあるべき姿だと考えています。

グローバル化や保護者への対応など、欠かせない全方位型の取組

藤野: 就職支援の充実には、卒業生の協力も欠かせません。幸い本学は、長い歴史に加えて卒業生組織がよくまとまっていますから、学生が各企業の卒業生を訪ねていきやすく、卒業生も学生の訪問を快く受け入れてくれています。また、法政BPC(ビジネス・パーソンズ・コミュニティ)を2012年に発足。組織的・持続的に学生のキャリア形成を支援するのを目的に、キャリアセンターとOB・OGの代表が事務局となり、各業界から参画する加盟企業90社の若手・中堅卒業生の有志とともに、学生に現役社会人との交流の場を提供しています。現在約200名がボランティアで活動していて、互いの交流を図っています。 それとは別に、就職内定の決まった現役学生によるサポーター組織もあります、市ヶ谷・多摩キャンパスでは毎年、約40名が一年下の学生の相談に乗っています。こうした活動は学生が学生を支援するピアサポート活動の一番として、全学的に推進している「法政大学ピア・ネット」の一端を担っています。

竹内: 先輩として後輩に自分の体験を伝える、翌年、その恩恵を受けた学生が後輩に返していくという好循環ができています。

藤野: メンバー同志の交流も深まり、卒業後は法政BPCとも連携してその輪を広げていくことを期待しています。キャリアセンターとしては、法政BPCも含めてより強固で大きな組織に成長する仕組みを現在、考えています。

竹内: グローバル化への対応は、私も委員として加わっているグローバル教育センターが担当していますが、「海外インターンシップ」に加えて「海外ボランティア」も単位認定されるようになりました。

藤野: 近年は少子化が進み、保護者の就活への関心も高まっている上、企業の採用活動解禁も揺れ動いていますから、保護者への説明は欠かせません。当センターでは、入学式当日に新入生保護者向けキャリアガイダンスを開催。本学の就職支援制度、公務員・法職講座、会計専門職講座についての3部構成で大学の就職に対する手厚いサポートに理解いただくように努めています。この他、毎年夏には全都道府県で「父母懇談会」を行っています。特に近年は、産業構造の変化やビジネスの多様化によって、保護者の時代と今の就職環境とは大きく異なることの理解やUターン就職に力点を置いています。

大学の学びの積み重ねが、自由な時代を生き抜く実践知となる

竹内: 大学や学部により多少違いはありますが、日本の大学では一般教養科目、専門入門科目、専門科目へと学年が上がるにつれ専門性を深めるような構造になっています。私はそれぞれの授業で学ぶことが、就職活動で求められる力にもなると考えています。自ら進んで情報を収集・分析したり、レポートの形で文章化したりすることは、エントリーシートを書いたり、企業研究における情報収集作業に通じますし、これらを4年間で繰り返し積み重ね、深めていくことで就業力、つまり文章作成能力、情報の収集・分析力、発信力、状況を判断して行動する力などが身についていきます。就職活動の時期が来たからと、これらを一朝一夕に身につけようとしても簡単ではありませんから。われわれの組織だけでなく、学生の学びもシームレスでなければなりませんし、何よりもそういう意識を持つことが大切だと思います。それができれば、卒業時には《自由を生き抜く実践知》を身につけてもらうことができると思っています。 一方で大学も、たとえ大教室の授業だとしても、従来の一方通行のものでなく、学生の参加を促すアクティブラーニング、課題解決型授業などに変えていくなど、教育改革のスピードを上げていかなければなりません。

藤野: デジタルテクノロジーの急激な進展で、将来は今ある仕事の半分が無くなるとも言われ、何事においても自ら切り拓いていく力が求められる今の学生にとって、大学4年間をどのように過ごすかはとても大事です。そこがしっかりできれば、本来の大学の学びを修得でき、キャリアセンターの支援と相まって、希望する企業への内定を得ることができると思っています。

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