コミュニケーション

博士課程教育リーディングプログラムフォーラム2017
「はかせだものみんなちがってみんないい~自分のキャリアを開くための「意思決定」のヒント~」が開催

フォーラムのパネルディスカッションの様子

博士課程教育リーディングプログラムフォーラム2017 レポート
はかせだものみんなちがってみんないい
〜自分のキャリアを開くための「意思決定」のヒント〜

10月19日から21日まで、名古屋にて博士課程教育リーディングプログラムフォーラム2017が開催された。そのなかで、名古屋大学・PhDプロフェッショナル登龍門2の学生有志主催にて「はかせだものみんなちがってみんないい〜自分のキャリアを開くための「意思決定」のヒント〜」という企画が催された。同企画では、PhDプロフェッショナル登龍門を履修する近藤菜月氏をモデレーターとし、博士課程教育リーディングプログラム(LP)修了生4名:武居弘泰氏(大阪大学・超域イノベーションプログラム修了、現シスメックス株式会社)、白石晃將氏(京都大学・思修館プログラム修了・現外務省)、乾敏恵氏(同志社大学・グローバルリソースマネジメントプログラム修了・現パナソニック株式会社)及び全光慶高氏(大阪大学・生体統御ネットワーク医学教育プログラム修了・現IMS Japan)をパネリストに迎え、大学院生、大学教職員を含む約80名の参加者とともに、LP履修生が「新しいタイプのキャリア」を切り拓くためのヒントを探った。

昨今、大学院重点化による博士学位取得者の増加や、産業界における多様性及びイノベーションのニーズ拡大にともない、博士学位取得者の取りうる進路は多様化しつつある。既存のレールに縛られず独自のキャリアを開拓しようとするLP履修生には、このような時代の流れが追い風となる一方で、前例のない世界に飛び込むことに対する不安や葛藤もつきまとう。同企画中、「LP履修時にはどのようなことを意識して行動すべきか」「各LPにおけるリソースの効果的な活用法はどのようであるか」「進路に悩んだ際の判断材料、決断方法は何か」など、現役のLP履修生が抱える悩みや疑問がぶつけられ、試行錯誤の末に自分の道を見つけつつあるLP修了生のリアルな回答を聞くことができた。

パネルディスカッションは2部構成にて行われた。第1部は、「パネリストの進路形成・ストーリー紹介」と銘打って、各LP修了生が、自らのキャリア選択や、LP履修時の葛藤や模索、試行錯誤についてざっくばらんに語った。「各LPの履修科目を通じて自分のキャリア観が明確になった」 「進路選択において重要な影響を与える恩師との出会いがあった」などLPを効果的に活用することが出来た例が挙げられた。一方で、「既に社会に出ている同期と比較すると焦燥感があった」「研究・専門性をどのように位置づけるか非常に悩んだ」というLP履修生独自の悩みや、「就職した現在においても、博士号取得者としての専門性や知見の明確な効果がまだ見られていない」 「周囲は多くが文系の学部出身者で自然科学系の博士号取得者はほとんどいない」などLPを修了した今でも苦労しながら道を切り開いている状況が紹介された。

会場の参加者との全体討論の様子

モデレーターとの対談を通じ、一見「順風満帆な成功者」に見えるパネリストが、LP履修時、そして今現在においてもLP先駆者としての悩みを持ちながら奮闘している姿が浮き彫りとなった。博士学位取得者のキャリア形成には「正規のルート」が存在しないことが改めて強調された。修了生からは「怒られるまでやってみよう」というメッセージから、前例がないことに臆せず挑戦することが重要であると勇気づけられたほか、「与えられた機会」を「将来につながる機会」として認識するアンテナをもつことが必要であるとのアドバイスなどもあった。

第2部は「全体討論」として、1)多様なキャリアを考える際に「博士学位」や「専門性」をどのように位置づけるか、2)バイタリティある人材を育成するために「LPができることは何か」という視点から活発な議論が展開された。両議題に対してパネリストから、「ある分野において課題を設定し、その解決に向けてアクションを取り、結果について評価をする。博士号の取得というのは、その一連のプロセスが出来る人に与えられるものであると考える」「LP履修にあたり自身の目的意識を明確化し、LPを効果的に活用することが重要である」といった持論が展開された。その後、会場の参加者を交えて議論を深化させた。LP修了生からは、海外の人類学者が、「自分は人に寄り添うプロ/専門家である」と表現したことに刺激を受けたというエピソードが紹介された。「専門性」や「能力」を自分の言葉で定義し、異なる分野においても自らの強みを見いだし、発揮できるようになることの重要性が強調された。また、専門分野で培う分析力に加え、LP履修によって得られる俯瞰力や先見性といった総合的な力の育成が重要であるとされた。

今回の企画は、修了生の声に刺激され、全国のLP履修生に「新しいタイプのキャリア形成」について考える機会を提供することができた。また、学びの主体である学生の視点から大学院教育を再考することの重要性が顕在化され、盛況のうちに幕を閉じた。なお、登壇者のプロフィールと当日の様子を撮影した動画は企画ウェブサイト(https://leadingforum2017-student.locatinto.jp)上で公開している。

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