
ITクラフトマンシップを掲げ、働き方改革を先導するゾーホージャパン(株)。これからのITエンジニアの育て方について聞く
勤務形態や情報公開、人を大切にする企業理念に基づく経営などが評価され、第7回「日本で一番大切にしたい会社」大賞※1で審査委員会特別賞を受賞したゾーホージャパン株式会社(本社:横浜市 代表取締役社長 迫洋一郎)。2016年、2017年と2年連続で日本における「働きがいのある会社」※2にも選ばれています。第5次産業革命の進展に伴い、IT人材不足が叫ばれる日本。ITリテラシーのない文系出身者も積極的に採用し、グローバルに活躍できるITエンジニアに育成するという同社の企業理念や社内の教育体制、求める人材像についてお聞きしました。

大山 一弘 氏
ManageEngine & WebNMS 事業部
事業部長 技術部長
※1 本誌124号5Pに詳しい。
※2 Great Place to Work (GPTW)は、「働きがい」に関する調査を行い、一定の水準に達していると認められた会社を各国有力なメディアで発表する活動を世界約50カ国で実施している専門機関。
採用で重視すること、独自の研修システム
当社は、Zoho Corporation (シリコンバレーで起業、現在インドに本社)で開発したソフトウェアを販売する日本法人として、2001年に設立されました。
製品開発は行いませんが、社員には販売や、顧客への対応、技術サポート等を行う上で、製品やITに関する知識・技術は不可欠です。にもかかわらず、2007年に始めた新卒採用(技術職)では、ITによる社会貢献への意欲があれば、文系・理系を問わずITリテラシーのない学生にも門戸を開きました。実際、初年度に入社した3名のうち、ITの知識があったのは1名だけ。しかし入社後の教育で、残り2名も大きく成長してくれました。
当時の新人研修もとてもユニークなものでした。インド本社には、Zoho Universityという社内教育機関(社内学校)があります。2005年に社会貢献もかねて開設したZoho Universityでは、裕福ではない家庭に育ち、経済的な理由で主に大学へ行けないインドの子どもたちに2年間、英語とITの知識を教え、ほとんどの卒業生を社員に採用します。その社内学校へ、半年間日本の新入社員を派遣し、ITや製品についてだけでなく英語にも慣れてもらうというものです。最初の3ヵ月間は、日本で3ヵ月後に開かれるITの展示会でお客様に製品説明ができるようになることを目標とし、後半の3ヵ月では、展示会の反省や見えてきた課題について勉強してもらいました。
この研修は2010年まで続きましたが、現在は半年、ないしは一年間で日本の基本的な商習慣を学んでもらうことを優先しながら、入社2年以内にはほとんどの新入社員がインド出張を経験します。英語教育については、インドとのやり取りが最高のOJTですが、TOEICの受検も推奨していて、860点以上を取るか、2年連続で730点以上を取るまで毎年受検してもらっています。検定料は会社が負担していますが、勉強自体は社員が個別に主体的に行っています。また、ITやセキュリティに関してeラーニングで自習できる環境も整えています。
スーパーフレックス制やテレワークも、フレキシブルな勤務形態が強み
週40、50時間の残業は当たり前とも言われるSEやプログラマーに比べると、わが社の技術職の残業時間は一日当たり1時間以下。そのため家へ帰って趣味に没頭したり、ITの勉強ができたりしますから、充実した毎日が送れ、業務に対しても新鮮な気持ちで臨めて効率もあがります。またテレワークによる自宅勤務も可能で、出産を控えて出勤に支障のでる社員などが、自分の都合にあわせて働き方を選択できるようになっています。さらに2016年からは、テレワークと組み合わせたコアタイムのないスーパーフレックス制度も導入し、多様な働き方が一層可能になりました。この背景には、10年後、20年後、30年後も良い会社として成長していきたいと考えたときに今いる社員がずっと残り続けて、一緒に良い仕事をしてくれるような会社にしたい、そのために柔軟に働ける制度が必要、という当社代表の考えがあります。ちなみにインドの本社も、様々な働き方のできる、とても働きやすい職場と評判です。所属部署については、ほとんどの新入社員は、一旦技術部に配属されますが、面談の中で希望を聞いておき、タイミングを見て異動できるようにしています。技術部門を経験して営業やマーケティングに移ることで力を発揮する人も珍しくありません。
採用面接で重視すること、求める学生像
弊社の今年の採用基準は、企業理念の根幹である「人の役に立ちたい」から、「ITを通して人の役に立ちたい」という熱い思いが行動に表れているか、です。業界全体として理系の職種が不足する中、ITに詳しくない理系の学生も含め、文系でもこうした意欲のある学生は積極的に採用していきたいと考えています。入社時に知識や技術がなくても、本人に強い気持ちがあれば十分やっていけることが、これまでの経験から明らかだからです。
面接時に重視するのは人となりです。大学の成績は見ませんが、何を、どう学んできたか、そしてどんな学生時代を過ごしてきたかについてお聞きします。もちろん学生時代だけでなく、高校時代の過ごし方について語ってもらっても構いません。総じて、ITに対して意欲的で、学生時代は研究などに没頭し、自ら学ぶ力をつけた人には伸びしろがあります。逆に情報系のリテラシーは豊かな人でも、努力を怠ればどんどん追い抜かれていきます。
ITを使って人の役に立つことに強い思いがあれば、グローバルなITエンジニアになるのは社会へ出てからでも遅くないと思います。
インドの新人研修に参加して
総務部 豊田 陽子さん (新卒採用一期生)
ITに関してはインドで初めてしっかり学びました。技術的なことを英語で学ぶので授業や製品トレーニングについていくことで精一杯でしたが、インドの社員の方はとても親切に指導してくださいましたし、向こうへ行ったからこそ広げられた人脈や仕事の仕方や考え方の多様さへの気づきは帰国後の業務の助けとなり、とても有意義な研修でした。