国内生15名を募集する「グローバル入試」の出願迫る


山田 満 先生
~Profile~
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。オハイオ大学大学院国際関係研究科東南アジア研究修了。博士(政治学)。埼玉大学教授、東洋英和女学院大学教授、東ティモール国立大学客員研究員などを経て、2009年から現職。専門は、国際関係論、平和構築論、東南アジアの政治。著書に、『東南アジアの紛争予防と「人間の安全保障」』(編著・2016:明石書店)、『難民を知るための基礎知識』(編著・2017:明石書店)などその他多数。

黒川 哲志 先生
~Profile~
早稲田大学政治経済学部卒。京都大学大学院法学研究科博士課程単位認定退学。博士(法学)。帝塚山大学助教授、米デューク・ロー・スクール訪問研究員等を経て、2004年より現職。専門は、環境法と行政法。おもな著作に、『環境行政の法理と手法』(2004:成文堂)、『環境法のフロンティア』(共編・2015:成文堂)などがある。
早稲田大学社会科学部は、新たな英語学位プログラム※1「ソーシャルイノベーションプログラム(通称TAISI)」※2を開設、2019年から日本国内の高校出身者にも門戸を開く。そのために、従来の「帰国生入試」にかわる「グローバル入試」を新たに実施する。一連の改革について、社会科学総合学術院長・社会科学部長の山田満先生や国際化推進を担当する黒川哲志先生など、社会科学総合学術院のみなさんにお聞きしました。
新しい英語学位プログラムで
国際社会に貢献する「ソーシャルイノベーター」の育成を目指す
設立から半世紀以上、社会科学部は、様々な専門分野を統合的・学際的に一体化したカリキュラムで学べる場であることを大きな特徴として展開してきました。私大文系ではトップクラスの人気を誇る今も、《社会科学の総合》を目指す《社会に開かれた学部》として、学際・臨床・国際の三つの理念を掲げ、《社会構想力》をもった人材の育成を図っています。
社会科学部での英語学位プログラム導入は、海外からの留学生・帰国生を対象にした2011年開設の「現代日本学プログラム」※3が契機。TAISIプログラムではそれを発展的に再編・拡大し、定員を20名から60名に増やし、入学時期も9月と4月の2回としました。
TAISIプログラムが目指すのは、複雑化するグローバル社会で、「大志」を抱き自ら課題を明らかにし、解決策を打ち出すとともに、周囲を巻き込みながらその実現を図る《ソーシャルイノベーター》の育成です。社会構想力を身につけ、様々な社会課題を総合的に解決できる、グローバル時代の「社学」らしい人材、と言い換えてもいいかもしれません。
カリキュラムは、社学の「学際性」を活かした4つの専門領域※4を基軸に、30名程度の少人数授業を中心に展開します。一番の特徴は、社学の持ち味である「臨床」を実現するべく、「フィールドワーク」を積極的に取り入れること。国内に限らず、インドネシアや東ティモールなど海外でのフィールドワークも予定しています。さらに、海外留学・海外インターンシップにもチャレンジしやすい環境を整備し、特に長期留学を積極的に奨励していきます。
TAISIプログラムの入試制度は、①日本国内の高校出身者を主な対象とする「グローバル入試」、②海外の高校出身者を主な対象とする「英語学位プログラムAO入試」と、大きく2種類あります。①グローバル入試は4月入学:15名、②英語学位プログラムAO入試は4月入学:5名、9月入学40名を募集します。私たちが求めるのは、国際社会に貢献する人材になるという高い志を持った熱い受験生。特に日本国内の高校生には、アジアを中心に世界各国から集まる様々なバックグランドを持った仲間と相互に刺激し合う環境に身を置き、いわば「内なる留学」を体験することで、世界に貢献するソーシャルイノベーターを目指してほしいと願っています。
グローバル入試とは
グローバル入試には、大きく二つの役割があります。一つは、国際社会に貢献する志をもつ国内高校の出身者をTAISIプログラムに受け入れること。もう一つは、いわゆる「帰国生」のように、豊富な海外経験を持つ人材を日本語学位プログラム(以下、一般プログラム)に受け入れることです。募集定員はTAISIプログラムが15名、一般プログラムが若干名。いずれも4月入学で、出願時に受験生がどちらかを選択します。
出願期間は8月1日〜7日で試験は9月9日。試験は日本語による小論文で、別途、所定の英語検定試験※5のスコアが必要です。これに加えて、TAISIプログラム志願者には英語のエッセイを、一般プログラムの志願者には海外活動報告書と海外活動経歴証明書の提出を求めます。また、TAISIプログラムでは入学直後から《英語で》学ぶことになるため、CEFR B2以上のスコアを出願要件として設定しています。
今回のTAISIプログラム開設やグローバル入試導入の背景には、国内の高校生や高等学校の変化があります。近年は、国内の高校から直接海外の大学を目指す生徒も少しずつ増えていますが、経済的負担やリスクの観点から国内の大学に一旦進学し、学部課程中に交換留学に行ったり、大学院で海外留学したりすることをオプションとする受験生も少なくないはず。TAISIプログラムはその受け皿として最適な選択肢の一つになると自負していますから、国際的なキャリアを目指す高校生には、ぜひ「グローバル入試×TAISIプログラム」にチャレンジしてほしいと思います。
さらに近年は、国内の高等学校ではSGH※6やIB校※7をはじめ、先進的なグローバル教育を実践する高校が増えています。また、海外で教育を受けた生徒が帰国する際に、インターナショナルスクールではなく、通常の高校の国際コースに進学・編入するケースも増えていると私たちは捉えています。一方で、社会科学部の従来の帰国生入試では、少なくとも高2、高3で海外の高校に在籍していたことを出願要件としていたため、それに当てはまらずに受験できない「帰国生」も少なくありませんでした。日本人の海外進出が進むのにともない、一口に帰国生とは言い括れないくらい、その学歴は多様になっていると思われますから、高大接続の観点からも、こうした高校や高校生にこのような入試や教育プログラムを用意することは急務だと判断したのです。
TAISIプログラムでは、すでに行われた英語学位プログラムAO入試(2018年9月入学)において、40名の募集定員に対して志願者は261名にのぼりました。定員の増加分を加味しても予想以上の反響があり、従来よりも更に優秀な学生が世界から集まっています。TAISIプログラムが、その革新性で社会科学部全体の多様化とグローバル化を牽引し、さらには日本の大学の閉塞状況を突破するのにすこしでも貢献できればと願っています。
入試や学位の選び方はWEBサイトの仮想ケースなども参考に。https://www.waseda.jp/fsss/sss/news/2017/05/29/7099/
※1 英語学位プログラムは、英語による授業の履修だけで学位を取得できる(卒業できる)プログラムで、その割合が大学のグローバル化の指標の一つとされる。
※2 Transnational And Interdisciplinary studies in Social Innovationの略称。明治150年ということもあり、ウィリアム・クラーク博士のBoys, be ambitious.の言葉にもかけている。
※3 大学の国際化をめざすG30の一環。グローバル30は大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業で、2020年を目途に30万人の留学生受入れを目指す「留学生30万人計画」の一環。
※4 ①持続可能な社会・都市・地域の実現に必要な知識や手法を学ぶCommunity & Social Development、②平和な社会を構築する上で必要な国際協力の在り方を平和研究の視点から学ぶPeace Building & International Cooperation、③経済的な視点から国際貿易や環境問題について学ぶEconomic & Environmental Sustainability、④社会の活性化に寄与する組織としての企業・団体などの活動を労働問題や社会保障を絡め学ぶSocial Organizations & Workingの4領域。
※5 英検、TEAP、IELTS Academic Test、TOEFL iBTのいずれか。
※6 スーパーグローバルハイスクール
※7 国際バカロレア認定校
UCのCollege of Educationと東京都市大学とは、2009年に協定を締結し、人間科学部の幼児教育研修プログラムにおいて、幼稚園・小学校の教員を目指す(都市大の)学生がカンタベリー大学で学んできました。このプログラムでは、UCで英語を勉強するだけでなく、ニュージーランドの学校を訪問したり、そこで授業を見学・体験したりもします。
東京都市大学との新たな連携プログラム
今回の東京都市大学&カンタベリー大学留学プログラム(TUCP)は、サポートシステムも含め、東京都市大学の学生のためにつくられたカスタムメイドのプログラムで、工学系の学生を中心に、45人の学生が16週間UCで学びます。(※16週間は1セメスターに相当)。このプログラムは今年8月からスタートします。
TOEIC600点以上が応募条件です。プログラムは主に3つの要素からなっています。最初の4週間はUC敷設語学学校で専門科目を受講するための英語力を身に着けます。その後UCの正規開講科目の専門科目や教養科目から2科目を選び9週間にわたってUCの学生とともに学びます。最後にロボット工学を含むラボラトリー・ワークなど、専門分野の集中講義を2週間受けます。こうして受講した科目の単位は東京都市大学の単位に互換認定されます。
プログラムへの参加期間中は大学に近接する学生寮アイラム・アパート(Ilam Apartments)に滞在します。この寮は850人あまりの学生が入居しており、寮生との交流もこのプログラムの魅力の1つです。
プログラム参加中は、スポーツや学生パーティーなど大学の様々な活動にも参加します。また、地元ラグビーチームの試合観戦、寮の活動など、多様な活動に参加して学生との交流を図ります。
プログラムのスタート時は募集人員45名ですが、2020年には100名の学生をUCに迎える計画になっています。
東京都市大学とのさらなる交流
また、UCでスポーツ・コーチングを学んでいる数名の学生が、今後東京都市大学のラグビー部においてインターンシップを行う予定があり、反対に東京都市大学の留学支援制度を利用し、教員がUCに1年滞在したことがあります。また、UCでスポーツ・コーチングを学んでいる数名の学生が、今後東京都市大学のラグビー部においてインターンシップを行う予定があり、反対に東京都市大学の留学支援制度を利用し、教員がUCに1年滞在したことがあります。
日本との交流
スポーツ・コーチングが専門分野であるリチャード・ライト教授は、以前日本でラグビーを教えていたことがありますが、UCではこの他にも様々な日本との交流を行っています。また、園田学園女子大学とは30年来の交流があります。毎年、UCの10~15人程度の学生が来日し園田学園女子大学で2週間、文化的な側面も含めて日本の幼児、児童教育を学んでいます。さらに、2020年には園田学園女子大学の学生120人がUCで英語を学ぶという計画もあります。このように日本との交流を非常に重要視しており、今後も東京都市大学、園田学園女子大学との交流の質を高めていきたいと考えています。
UCの国際化
現在UCの在学生約17,000人のうち、1,800人は世界100か国から来た留学生です。そのうち博士課程は400人、残りは修士か学部生です。また学部生として中国から350人、米国から250人、インドから150人の留学生が学んでいます。今後、東京都市大学、園田学園女子大からの留学生が同程度になれば、他の国・地域からの留学生と比較しても、ちょうどよいバランスの構成になると考えています。
UCの国際化は教員に関しても実現されています。教授の半分は海外で生まれたか、海外で学んだ経験があります。また、オックスフォード大学やケンブリッジ大学を含む世界中の大学との教員交流プログラムや、UCの基金を活用して、海外の教員が最大6カ月間UCで学ぶことができるシステムもあります。その他、ノーベル賞受賞者などを招聘し、毎年75の国際的な学術講演も実施しています。
日本からの留学生がカンタベリー大学で学ぶメリット
UCはQS世界大学ランキングトップ1%に入る大学であり、世界トップクラスの教授陣から学ぶことは大きな価値があると考えます。また、UCでは多くの学生が協働して学ぶということ、学んだことを応用していくことに注力しています。世界トップクラスの大学でトップレベルの優秀な教授陣から、日本とは異なる学び方ができると思います。
加えて学生街のコミュニティの中で生活できるのも、留学生にとっては貴重な体験機会が提供されていると言えます。