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留学の本質

法政大学 学務部学部事務課 佐藤 琢磨 氏

SGUに認定された本学において、新型コロナウイルスの猛威は予想以上の影響をもたらした。すべての留学プログラムは中止もしくはオンライン実施となり、カリキュラムの見直しを余儀なくされることとなった。現在、外務省は、ほとんどの国を感染症危険レベル2「不要不急の渡航は止めてください」以上とし、学生の主な留学先である米国やヨーロッパは、レベル3「渡航中止勧告」とされ、海を渡ることは事実上制限されている。留学への扉が閉ざされてしまったこの機会にあらためて、留学の本質とは何か、またその代替可能な方法について私見を述べてみたい。

「 トビタテ留学JAPAN ! 」 の W E B サ イ トによると、以下6点を留学の定義としている。

1.外から日本(外)を見る機会(視野の拡がり)

2.知らないことを知り、知りたいことを知る機会(世界への関心)

3.違う価値観に触れ、意味を知る機会(多様性受容)

4.己のことや日本を知る、知りたいと思う機会(アイデンティティ)

5.飛び込むことに自信を持つ機会(自己肯定感)

6.逃げないで苦労する機会(ストレス耐性)

さらに、「留学によって視野を広げ、自分に力をつけることでその後の人生の選択肢が大きく広がり」「これからの変化が激しく、予測が困難で、正解のない時代を生きて行くためには、自ら『未来を切り拓く力』が必要」と記載がある。これらの力を獲得することが「留学の本質」だとすれば、どのような代替手段が考えられるだろうか。まず、この新型コロナウイルスによる「災害」そのものは、留学中に頻繁に遭遇する「予想外」の出来事と言える。留学希望者には、今後の人生でも起こりうる現実として逃げずに正面から向き合って欲しい。現実をいかにポジティブにとらえるかというマインドセットを修得することは、留学体験における価値の一つと言える。上記で言えば6のストレス耐性がこれにあてはまる。次に、来日している外国人との交流についてはどうだ ろうか。出入国在留管理庁によると、令和元年末日の中長期在留者数は262万人を超え、全国に外国人コミュニティが存在する。国内に滞在する外国人とのイベ ントやプログラムを通した交流も可能である。本学にも、中国人や韓国人をはじめとした外国人留学生が通学しており、彼ら彼女らとの様々な交流もその一つとしてあげられる。3.「多様性の受容」4.「アイデンティティの認識」については、ハードルは高いかもしれないが、 障がい者やLGBTなど性的マイノリティとのコミュニケーションや協働も、他者を知り自分を知るという貴重な経験をもたらしてくれるだろう。さらに、中高生の場合、主に海外の子女が通うインターナショナルスクールとの交流やイベントの共催も現実的な選択肢として考えられる。 このように、留学で得られるスキルやマインドセットを獲得するための手段は、100 % とはいかなくとも他にいくつか考えられる。ただし、学校間のプログラム提携や共催、実際に行われている交流プログラムなどの提示など、大人たちのサポートも、重要な要素となるだろう。グローバル戦略の見直しを求められている各大学では、ハイブリッドオンライン留学や COIL( 国際協働オンライン 学習プログラム)をはじめ、様々な代替措置について検討 / 実施を進めている。 しかし、大学が提供するプログラムに頼るだけではなく、個人として行動を起こすことによっても選択肢は広がり、自立的な経験を得ることはできるだろう。 留学は、誰かにお膳立てされたパッケージツアーではない。また、現地を訪ね滞在すること自体がゴールでもない。 その目的とは、従来と異なる環境下において、何に挑戦し、何を得るかの一点につきる。自分たちの手持ちのリソース で、今、何ができるかについて悩みぬくことが、留学に代わる方法を実践する第一歩と言える。「悩み」はくれる「ギフト」だ。

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