今回は筆者が足掛け2年かけて構想した一大プロジェクトのご紹介です
あなたはどんな“不思議”を追っていますか
全国9地区で開催する一大プロジェクト、『全国キャラバン3Questions』始動!
京都大学 学際融合教育研究推進センター准教授 宮野 公樹
1973年石川県生まれ。2010 ~14年に文部科学省研究振興局学術調査官も兼任。2011~2014年総長学事補佐。専門は学問論、大学論、政策科学。南部陽一郎研究奨励賞、日本金属学会論文賞他。著書に「研究を深める5つの問い」(講談社)など。
現在の大学は、事業戦略立案やKPI設定、ガバナンス強化、大学ランキング対策などに多大な時間を費やしています。社会の中の大学としての中長期戦略を考えることはもちろん重要です。しかし、利益誘導型の政策では、大学が企業体に形式的に近づくだけで大学の色合いは薄まり、それはまた学問の魅力の低下につながっていくのではないでしょうか。実際、この20年における研究時間や博士課程進学率は減少傾向です。また現場も短期的な成果を生まなければならないというプレッシャーに常にさらされています。
このままでは、我が国の学問の土壌はどんどん枯渇し、未来は先細りになる一方ではないか。論文産出や研究資金の獲得もさることながら、原点である探求者としてのピュアな「問い」を磨きあい、かつ、それらを多様なものにすることこそが学問の営みのはず。にもかかわらず、今や私たちはその灯火を単独の大学で守ることが不可能とも思えるような状況に置かれていると言わざるをえません。であれば、全国規模で多様な学問を掘り起こし、その灯火を再点火していくしかない。
このように考え、今年2024年より、研究者の「問い」にフォーカスした研究ポス
ター発表大会(主催:『全国キャラバン3Questions』を、公益財団法人国際高等研究所※主催の下に全国9地区で実施することにしました。各地区では、その地区の大学、研究機関に所属する教員、研究者、大学院生、そして高専生が研究ポスターを掲示し、来場者は誰でも付箋紙でコメントを残すことができます。ポスターには
①「わたしが追っている不思議」として、研究者としての核心や原点にあるテーマが300字で、
②「これまでやってきたこと、やろうとしていること」として、前例・類似研究にも軽く触れながら自身の研究活動とこれからの目標やねらいどころ、展開方法が300字で、
③「みなに問う!」として、これからしたいことや、今抱える苦労や困難、投げかけてみたい質問や求めたいアドバイス、話し合いたいトピックが200字以内で、
示されます。
最⼤の特徴は、あえて匿名の発表とすること。これにより、閲覧者は所属組織や専⾨名だけで内容を判断してしまうなどの先⼊観から自由になり、発表者と本音で意⾒交換することができます。さらに、初対面でグループセッションを行うなどで出会いを演出したり、新たな共同研究を創出する「コラボ用ハッシュタグ」を準備したりするなど工夫をこらしています。
第一回目は、3月3日から4日間、広島大学にて開催。小・中学生や高校生、その保護者、高校関係者などの来場も大歓迎です。
詳細は以下からhttps://www.iias-3questions.info/tyugoku
本会ではあわせて、今後2年にわたる全国キャラバンを応援、ご支援いただくためのクラウドファンディングも実施しています。
■今、⼤学なのに「学問」がしづらくなっている状況をなんとかしたい
■アカデミアとビジネスをはじめとする我々の暮らしとは「地続き」であることを行動として表したい
との私たちの趣旨に賛同いただける方のご支援お待ちしています。
またご支援いただける・いただけないにかかわらず、下記の「実施への想い」をぜひともご覧ください。
https://academist-cf.com/fanclubs/336/progresses?lang=ja
※公益財団法人国際高等研究所:京都府木津川市、理事長 上田輝久、所長 松本 紘
「人類の未来と幸福のために何を研究するかを研究する」を基本理念とする。