大学ランキングからはわからない大学の実力
新設大学バッシング 学生募集は地域との連携がカギ
教育ジャーナリスト 小林 哲夫さん
~Profile~
1960年神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト、朝日新聞出版「大学ランキング 」編集者(1994年~)。近著に『日本の「学歴」』(朝日新聞出版 橘木俊詔氏との共著)。
4月2日、参議院文部科学委員会で野党国会議員は文部科学省にこんな質問をしている。
「武雄アジア大学の大幅定員割れ状況について、文科省はどう認識しているのか?」
これを受けて同省高等教育局長、合田哲雄さんはこう答えている。
「武雄アジア大学の見通しが甘かったものとして大変遺憾。認可した設置計画の履行状況について調査を行う。今後も定員通りの学生が集まらない場合は実績に応じた定員規模縮小を求める。経営改善が必要な状況に陥った場合、経営指導の対象法人とする。」
文科省は誠実に対応している。国会答弁特有の「遺憾」には大学に対する批判、抗議の意味は込められておらず、残念だという思いを素直に示したといっていい。
今年開校した5つの四年制大学の入学状況
※大学公表、またはメディア報道に基づく(左から:入学者数 / 定員 / 定員充足率)
- コー・イノベーション大 (岐阜県飛騨市) : 51人 (120人) 42.5%
- 大阪医療大 (大阪府大阪市) : 不明 (80人)
- 西日本看護医療大 (福岡県北九州市) : およそ90人 (80人) 112.5%
- 福岡国際音楽大 (福岡県太宰府市) : 91人 (80人) 113.8%
- 武雄アジア大 (佐賀県武雄市) : 37人 (140人) 26.4%
残念ながら、コー・イノベーション大、武雄アジア大は定員を大きく下回った。これに対して、地域、メディアなどの反応は厳しかった。
武雄アジア大について、冒頭に紹介した参議院文部科学委員会でのやりとりからは、質問者には、文科省に対して定員割れした大学を設置認可した責任を問う意図が感じられる。武雄市が13億円、佐賀県が6.5億円の公金を投入したからだ。
そして、SNSでは、武雄アジア大の存続に反対する署名活動が起こった。署名で訴えている内容は以下の通りだ。
- 閉校に向けた整理に直ちに着手
- 武雄市は学校法人に補助金13億円の返還を求める
- 大学誘致、公費投入などの妥当性を検証し、その結果と責任の所在を明らかにする
地域における大学の存在意義と直面する現実
かつてその地域に大学が開校すると、地元の人たちはおおいに喜んだ。次のようなメリットがあるからだ。
- 若い人が地域にとどまってくれる
- 若い人が地域にやってくる
- キャンパスで食事や清掃などさまざまなビジネスが発生し雇用が生まれる
- 大学教員が市民講座などで専門分野を発信し地域に文化をもたらしてくれる
- 工学系学部であれば地場産業との産学連携で商品開発ができる
大学は地域活性化の原動力になってくれる、ということだ。少子化に歯止めがかからず、地方都市が疲弊しているなか、大学は希望の星である。
ところが、である。昨今、地方都市で大学開学という話が伝わっても地域社会、メディアはそれほど歓迎していない。むしろ、冷ややかに受け止めている。「税金の無駄遣い」「大学が多すぎる」「学生が集まるわけがない」という観点からだ。
こうしたことから新設大学はヒール役、嫌われ者になってしまった感がある。実際、コー・イノベーション大、武雄アジア大は定員割れが報じられると、SNSでバッシングが起こった。罵詈雑言、罵倒、非難の言葉がぶつけられとても悲しい。
開学してまもない大学が募集停止となる、残念なケースがあった影響が大きい。2023年電動モビリティシステム専門職大(山形県西置賜郡)は開学したが入学者は3人、24年は2人だった。25年に募集停止となる。自治体から億単位の支援を受けていたことで批判された。こうした事例は地方大学でいくつか見られる。ぜひ、参考にしてほしい。
大学が地域に溶け込み、盛り上げるために
大学に対してもう少しやさしくなってほしいと考えるのは筆者だけではないだろう。大学と地域が「町おこしのため一緒にがんばりましょう」という流れにはならないのだろうか。このような状況を変えるためには大学が地域に溶け込むしかない。どんな小さなイベントでもいい。教職員、学生が地域の人たちと関わって交流する。これを大学が仕掛けるしかない。
共愛学園前橋国際大(群馬県前橋市)は2000年代、定員割れが続き、大学運営でとても厳しかった時代を経験している。ところが学長が変わり、地域と積極的に交流したことによって支持が得られ、学生を集められるようになった。入学者数がV字回復したのである。こうした事例は地方大学でいくつか見られる。ぜひ、参考にしてほしい。
その地域に大学が誕生する。地元民が歓迎し温かく見守る。
大学は地域活性化のカンフル剤になり得る。開学早々、定員割れだから「大学はなくすべき」ではなく、「大学を盛り立てていこう」。そんな雰囲気が作り出されるためにも、大学は日ごろから地域に「一緒に町を作っていきましょう」と呼びかけてほしい。






