オピニオン・連載

16歳からの大学論 中学校向け「学問図鑑」を監修

宮野 公樹 先生

 この度、人生で初めて監修した「世界が広がる学問図鑑」(Gakken)が発刊されます(2023年2月)。学問論を専門に持つものとして、このような「学問」の「図鑑」に関われたのは学者冥利に尽きることであり、感謝の念に堪えません。以下、図鑑に記載した「おわりに」を改編し、紹介します。

 この図鑑を作るにあたり、三つの挑戦をしました。

 一つ目は、「気になること」から研究分野と出会うしくみにしたこと。通常、「学問図鑑」という名前から想像すると、様々な研究分野が分類、羅列されていると思われるでしょうが、本書では、みなさんの「気になる」や「関心ごと」がまず先にあって、それをたどることで「自分の知りたいこと」に関連する研究分野を知ることができるという形式にしました。分野ありきではなく、気になること、知りたいことがまず先にあるというわけです。他にも、この図鑑にたくさん掲載されている楽しいイラストたちを眺めながら、「あー、自分ってこういうことに興味あるかも」と気づくことにも役立つでしょう。

 二つ目は、いわゆる理系/文系という既存の学術分野に囚われずに作ったこと。例えば、「生命とは?」という問いに関しては、科学的、生物学的な説明にとどまらず、哲学や法学の話もなされています。そもそも私たちの「問い」というものは、いわゆる理系や文系という区分けに当てはめることができないもの。あらゆる「問い」は、あらゆることがらと関係しているので、特定の専門、研究分野に収まりきらないものなのです。それが本来の「問い」の有り様(よう)なのですから。

 三つ目は、不完全な図鑑として作ったこと。この図鑑において、気になるところをたどったその先には、たかだか200字程度の説明文があるのみ。それを読んだだけで「なるほどわかった!」とはならないと思います。むしろ、その説明文は「問いかけ」の形で終わっており、その先は、読み手であるあなた自身で考えてみたり、調べてみたりして欲しいのです。そもそもほんとうの「生ける知識」とは、外から与えられるものではなく自分の内から自分自身で生み出すもの。あなたの一番大切な「問い」はあなたのものであり、あなた自身で問い続ける他ないのですから。

 ある意味、図鑑の図鑑ともいえるこの図鑑。これが、みなさんにとっての学問の扉となれば幸いと思い作りました。なお、本書はいわゆる図書本であり、主に小中学校の図書室向けのものです。ECサイトでは購入できますが、一般書店には流通しません。図鑑ですからサイズも大きいですし、値段も高めです。本誌をお読みのみなさまの目にはなかなか触れることは無いかもしれませんが、いつか、どこかで、みなさまの目にとまることを祈っております。(続く)

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