シリーズ 大学が地域の核になる—京都文教大学の挑戦
チームで考え、学び合う。
プロジェクト型現場学習。

京都文教大学地域協働研究教育センター 専任研究員 石田 浩基
プロジェクト科目は、宇治市や京都市伏見区などの地域と連携して行う「地域」型と社会問題や具体的な課題解決に向けて取り組む「テーマ」型があり、前後期あわせて10~20のクラスが開設されています。学期初めに学生たちは、担当教員や連携地域・団体から課題を与えられます。この課題に対し、チームで仮説を考え、検証し、課題解決の手法を探るという授業形態が、本科目の特徴です。学期末には、当該学期全クラスによる合同成果発表会が行われ、課題解決への提案や科目での学びについて、広くプレゼンテーションが行われます。これも大きな特徴の1つと言えるでしょう。今回は、2018年度前期開講の2クラスについて紹介します。なお、全クラスの合同成果発表会は、7月21日(土)に行われます。

京都文教大学では、学生の現場実践力を高めることを目標に、様々な地域の現場での実践に取り組む「現場実践教育科目」が開講されています。これは2年次生以上を対象とした全学共通科目であり、そのうちの1つが、PBL(Project Based Learning)の手法を取り入れた「プロジェクト科目」です。本稿では、2018年度前期(4~7月)に開講された2つのプロジェクト科目について、具体的な取り組みを紹介します。

まち歩き企画による地域資源発見クラス

このクラスでは、宇治市広野町において地域生涯学習支援事業の一環として行われている「ひろの探検隊」の企画立案・実施を通して、計画力や実行力、地域の魅力を発見する力を養うものです。
「ひろの探検隊」は、まち歩きを通して、地域の歴史や文化資源の再発見を試みる取り組みであり、2018年度前期は全3回が実施されました。このクラスでは、そのうちの1回を学生企画とし、授業では実施に向けた企画会議や現地調査、準備に重きを置いています。
学生にとっては、まったく知らない地域のまち歩きを考えるということで、具体的なイメージや地域情報も乏しいところからスタートしなければならないので、それらを収集すると同時に、イメージを共有するための話し合いが必要になります。
授業回数が限られている中、まち歩きのルートや立ち寄り地点などの選定、役割分担を決めなければならないため、企画会議は思うように進みません。企画実施直前まで各々が準備に追われることとなりました。
そして迎えた当日は雨のため、急遽別のプログラムに変更するなど、終始思い通りにことが運ばない1日となりました。その中でも、事前の予報で雨天の確率が高いことを知りながらも、実施に向けた企画準備に学生が精を出したことは評価できる点であり、計画を実行する力、状況を把握しながら取り組む力が高まったのではないかと感じています。

企業と考える地域づくりクラス

このクラスでは、京都府南部地域に所在する中小企業3社を訪問し、地域社会における企業の役割や学生の関わりについて考える中で、課題発見力や創造力を養うものです。
授業では、まず座学にて企業の役割や行政、NPOとの違い、地域参加の事例などを学び、企業訪問の土台となる基礎知識を身につけます。
訪問企業は、市町や業種、業態が異なるように選定しています。1社目は、京都市伏見区で訪問看護や配食サービスを行う企業、2社目は城陽市の酒造会社で、それぞれ5月、6月に訪問を行いました。3社目は久御山町にあるプラスチック製品のファブレスメーカーであり、7月の訪問を予定しています。このように業種や業態の異なる企業を訪問することで、様々な地域への参加、貢献のあり方を学生に考えさせることを授業の目的としています。
同時に、各社の事業内容や地域貢献活動だけでなく、地域に根ざす経営者の想いや社員の働き方についても、学生の関心を向けさせることで、自身の進路について考える機会としていることも、このクラスの特徴です。
企業訪問後の学生からは、地域住民との信頼関係を構築する経営スタンスや、小規模ならではのフットワークの軽さについて強く認識したとの感想が多くあがりました。こちらは、まだ企業訪問の途中段階ということもあり、どのような成果が結実するのか楽しみです。

公開シンポジウム「学びと創造性」

日時:2018年9月1日(土)
12:30~17:40(開場12:25)
会場:京都大学百周年時計台記念館国際交流ホールⅢ

会場とアクセス:会場となります京都大学百周年時計台記念館国際交流ホールIIIは、京都大学吉田キャンパスの本部構内にございます。京阪本線「出町柳」駅から東へ徒歩15分または京都市営バス「京大正門前」下車(路線によっては「百万遍」で下車ください)

共催:国際教育学会(ISE)
神戸大学社会システムイノベーションセンター
京都大学経済研究所
京都大学基礎物理学研究所
京都大学統合複雑系科学国際研究ユニット
同志社大学ライフリスク研究センター

第一部:「グローバル時代の教育」(12:30~13:30)
第二部:「教育の意味を考える」(13:40~14:25)
第三部:「創造的問題解決とは何か」(14:35~17:00)

15:45~17:00パネル・ディスカッション「何が想像を生むのか―創造的問題解決」
モデレーター:大野照文(三重県立博物館館長)
パネリスト:柴田一成(京都大学大学院理学研究科附属天文台台長)
村瀬雅俊(京都大学基礎物理学研究所)
阿部建一(総合地球環境学研究所)
森悠子(長岡京室内アンサンブル音楽監督)
富田直秀(京都大学大学院工学研究科)
八木匡(同志社大学)

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