
松本 紘先生
~Profile~
1942年生まれ。奈良県出身。京都大学工学部電子工学科卒業後、同大学工学研究科で電子工学を専攻。67年、同修士課程修了。京都大学工学部助手、助教授、NASA研究員、スタンフォード大学院研究員、京都大学宙空電波科学研究センター長、同大学生存権研究所所長などを経て、現在に至る。
学外では、国際電波科学連合会長、地球電磁気・地球惑星圏学会会長など歴任。2007年秋の褒章 紫綬褒章受賞。
専門分野は宇宙プラズマ物理学、宇宙電波工学、宇宙エネルギー伝送、生存権宇宙電波科学など。
宇宙太陽発電所(SPS)計画
5年ほど前にNASAの研究所で客員研究員をしていた時に宇宙太陽発電所(SPS Space Solar Power Station)の計画を知り、帰国後に研究を始めました。これは、宇宙に超大型の太陽電池パネルを広げて、太陽光発電によってクリーンな電気エネルギーだけを地球に伝送しようというものです。伝送は送電アンテナから太陽光発電によって得られる直流電力をマイクロ波に変えて地上に降ろす方法で、受電アンテナ基地で再び電気に戻します。私はマイクロ波送電の実証実験などを行いました。
最近では太陽光発電などの市場が拡大してきていますが、地上では夜がありますし、天気に左右されるといった欠点があります。それならいっそのこと宇宙へ出てみようという発想がSPSです。宇宙であれば、曇りも雨も、昼も夜もない。24時間、年中太陽エネルギーを使用することができます。現に、ほとんどの人工衛星は太陽電池を広げてエネルギー源にしています。
SPSは技術的には現在でも可能です。ただ、巨大な設備を擁しますからその建造費、打ち上げ費用、さらに地上受電施設の建設費などに全部で1兆円はかかるとみられていて、火力発電や原子力発電に比べて 発電単価がまだ高いために採算面での課題があります。しかし、技術開発は日々進んでいますし、コストダウンは可能だと思います。後は人類の生存をかけてどれだけ本気でやろうとするかです。
人類が生き残るために –
SPSを作ることは、私の究極の目的ではありません。究極の目的は、人類が争うことなく、生存圏のフロンティアである宇宙に展開して繁栄を続けることです。宇宙科学の研究をしてきたのは、宇宙を利用するためです。利用するためには理解する必要があるからです。
日本は資源が少なく、少子化で人的資源も減少傾向にあります。21世紀をどう生き残るか。国としても、人類としても、生き残りをかけて進まなければいけない段階にきていると思います。これからは科学も、生きるか死ぬかの視点を持たなければいけません。水、食料、エネルギー、環境、資源などの問題を、こうした視点のもとにまとめたのが生存基盤科学です。人類の生き残りをかけて、社会科学、人文科学なども含めて総合的に考える必要があるのです。未来を生きるみなさんには、大きな視野で生存基盤科学を学び、考えていってほしいと思います。