新しい女子大学の形を求めて
必須のITCスキル、コロナ禍での経験、試行錯誤も生かしたい
女性活躍の社会が推進されているが、女性の置かれている状況はまだまだ厳しい。その中で安心できる場、落ち着いて学べる場を提供することが、女子大の不変の使命だと思う。 ただ、時代が大きく変わる中で求められるスキルは変化しているので、その対応を急ぎたい。 中でも社会の高度情報化、Society5.0へ向けて、大学の情報化と学生一人ひとりにICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)のリテラシーをつけてもらうことは喫緊の課題だ。ICTは、力も要らないし場所も問われない。ジェンダーレスで、女性に向いている側面も多く、これまでの男性中心の産業構造を変える可能性が期待される。 そこで2022年春からは、入学者全員にPCを保持してもらうBYOD(Bring Your OwnDevice:自分のデバイスを持ち込む)によるICT教育を展開する。そのための教室や自習室の整備も急ピッチで進めている。また全学生に対して、情報技術を理解し、主体的に活用できるようになるとともに、社会の課題を見出して解決方法を提案できる力をつけることを推奨する。具体的には『データ理解と統計科目』と呼ぶ科目群を用意し、2021年後期からは、その第一弾として、全学共通の『現 代社会とデータ』がスタートする。 この一年半、本学でも全力でオンライン、ハイブリッド、ハイフレックスによる教育を模索してきたが、こうした経験、試行錯誤がICT教育に弾みをつけてくれたのは確かだ。教員だけでなく、学生も機器やソフトの使い方に習熟したし、ICTの使い方や、ポストコロナにおいても有効な学び方についても数々の示唆を与えてくれたからだ。 一方、《教育の松蔭》のキャッチフレーズのもと、積極的に展開してきたもう一つの柱である課外授業やPBL(Project BasedLearning)、地域貢献型や産学連携活動による課題解決型のアクティブラーニングなどは、コロナ禍で停滞を余儀なくされた。ただ、コロナ禍を特殊な要因と考えれば、ここまでの一連の学部の新設・改編も含め、狙いとしてきた教育の質の向上に向けた取り組みは、着実に成果を上げていると手応えを感じている。 コロナ禍はたしかに、ICT教育の推進にとっては追い風ではあったが、教育にとってリアルの効果がいかに大きいかをあらためて認識もさせてくれた。 130年の歴史の中でわれわれは、第二次世界大戦や阪神淡路大震災という大きな災禍を克服してきた。今またコロナ禍という新たな災禍の中にあるが、それを克服して教育の松蔭の歩みを一層加速していきたい。
キャンパスから六甲アイランド、大阪湾をのぞむ
学院創立130周年の節目の年に、これまでのモットーである“A grain of mustardseed”(一粒のからし種)”の成長を動的に表現するスローガンが必要であると新たに作成された。一粒のからし種とは、それに姿かたちを変えながらの成長を期 待して神の愛と恵みの息が吹き込まれるならば、やがて鳥が枝に巣を作るほどの木になるというイエスの約束に由来する(新約聖書「マタイによる福音」)。130周年スローガンには、松蔭女子学院という場での学びと出会いを通して、絶えず自 分を見つめ直して古い殻を破り、新しい自分を発見することによって個性を確立し、社会に貢献する、光輝く女性への成長を促すという教育理念を込める。
130周年記念ロゴマーク
130th KOBE SHOINは、神戸市北野町で産声を上げ、130年の歴史を持つ松蔭女子学院を意味する。十字架は人間の弱さや苦しみに寄り添い、人間の罪深さを明らかにするために身代わりとなって亡くなったイエスの十字架。その4つの方向は、Heart・心、Soul・精神、Mind・思い、Body・全身を表わし、心を、精神を、思いを尽くし、全身全霊で神を愛すとともに、人間同士、互いに愛し合うことが最も大切な戒めであることを表す。オリーブの葉は、ノアの方舟から放たれ戻ってきた鳩が口に加えていたもので、大洪水が終わり、世界に再び平和が回復したしるしとされ、円環をなしているのは、神の無限の愛を表わす。
オリジナルの「神戸松蔭タータン」を素材に学生がデザインした洋服。タータンの5色は130年の歴史を象徴。2021年3月にスコットランドの政府機関において、正式なタータンとして登録された。
神戸松蔭タータン