iGEM (The international Genetically Engineered Machine competition) は、合成生物学の発展に寄与することを目的に、世界規模で開催される学生コンテストです。大会(年に一度)では、45か国以上350を超える大学の学生チームが一堂に会します。各チームは、自由な発想のもとでテーマを決め、実験を行い、その成果をプレゼンテーション、ポスターセッション、Wiki(Webページ)を通して発表し、独創性・実現性を競い合います。さらに合成生物学が抱える倫理や安全面からのさまざまな問題に対して、社会的活動も行います。
iGEM Kyotoは、学生が責任と自主性に基づき自由に研究活動を行い、iGEMの最優秀賞を目指す京都大学の学生チームです。当チームはこれまで、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題や、線虫によるマツ萎凋病問題を解決するプロジェクトに取り組んできました。昨年は、“FLOWEREVER”というテーマで、私たちにとって身近な存在である花の抱える諸問題に取り組みました。例えば、ウイルス感染に対しては葉から抽出した RNA から RT-LAMP 法という手法でウイルス由来の DNA を増幅し、CRISPRCas12aという配列検出システムを用いて、蛍光の有無からウイルス感染の有無を検出する手法を開発しました。
世界を変える精鋭が育つ研究・教育の場、京都大学大学院 総合生存学館。2018年に第一期生として巣立ったキーリーアレクサンダー竜太さんは、九州大学工学研究院でエネルギー技術のファイナンスと持続可能性評価などに関して研究する傍ら、2016年から糸島小水力発電株式会社の代表取締役として小水力発電の普及に尽力している。2022年には、グローバルサプライチェーンを対象に、独自開発のAIを用いて、製品・サービスの包括的なESG(Environmental, Social & Governance:社会・環境・ガバナンス(企業統治))影響評価を可視化するサービスを行う大学発スタートアップも創業した。キーリーさんに、研究内容やその成果、社会実装の難しさ、やりがいや将来展望について、大学・大学院での思い出とともにお聞きしました。あわせて将来、研究者を目指したり、その成果をもとに起業することを考えているみなさんへのメッセージもいただいています。
私が通った京都大学大学院総合生存学館は、分野横断的・俯瞰的視野で地球規模課題の解決に取り組む研究力育成のための専門分野を深めつつ、実践力を身に着けることができるユニークなカリキュラムに特徴があります。小水力発電所創業を大きく後押ししてくれたのが、4年次の『海外武者修行』と5年次の『Project-Based Research (PBR)』と呼ばれるプログラムです。
P r o f i l e 1989年3月 慶應義塾大学 理工学部 計画工学科 卒業。1992年12月カリフォルニア大学バークレー校 工学部M.S.(修士号)取得。1994年12月カリフォルニア大学バークレー校 工学部Ph.D.取得。1995年4月 慶應義塾大学理工学部助手。専任講師。助教授を経て2007年4月から教授。2016年11月~2017年3月 大学グローバルリサーチインスティテュート副所長。2017年4月~2019年3月 慶應義塾大学理工学部長・理工学研究科委員長。2021年5月から現職。慶應義塾高等学校出身。
女性活躍の社会が推進されているが、女性の置かれている状況はまだまだ厳しい。その中で安心できる場、落ち着いて学べる場を提供することが、女子大の不変の使命だと思う。
ただ、時代が大きく変わる中で求められるスキルは変化しているので、その対応を急ぎたい。
中でも社会の高度情報化、Society5.0へ向けて、大学の情報化と学生一人ひとりにICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)のリテラシーをつけてもらうことは喫緊の課題だ。ICTは、力も要らないし場所も問われない。ジェンダーレスで、女性に向いている側面も多く、これまでの男性中心の産業構造を変える可能性が期待される。
そこで2022年春からは、入学者全員にPCを保持してもらうBYOD(Bring Your OwnDevice:自分のデバイスを持ち込む)によるICT教育を展開する。そのための教室や自習室の整備も急ピッチで進めている。また全学生に対して、情報技術を理解し、主体的に活用できるようになるとともに、社会の課題を見出して解決方法を提案できる力をつけることを推奨する。具体的には『データ理解と統計科目』と呼ぶ科目群を用意し、2021年後期からは、その第一弾として、全学共通の『現
代社会とデータ』がスタートする。
この一年半、本学でも全力でオンライン、ハイブリッド、ハイフレックスによる教育を模索してきたが、こうした経験、試行錯誤がICT教育に弾みをつけてくれたのは確かだ。教員だけでなく、学生も機器やソフトの使い方に習熟したし、ICTの使い方や、ポストコロナにおいても有効な学び方についても数々の示唆を与えてくれたからだ。
一方、《教育の松蔭》のキャッチフレーズのもと、積極的に展開してきたもう一つの柱である課外授業やPBL(Project BasedLearning)、地域貢献型や産学連携活動による課題解決型のアクティブラーニングなどは、コロナ禍で停滞を余儀なくされた。ただ、コロナ禍を特殊な要因と考えれば、ここまでの一連の学部の新設・改編も含め、狙いとしてきた教育の質の向上に向けた取り組みは、着実に成果を上げていると手応えを感じている。
コロナ禍はたしかに、ICT教育の推進にとっては追い風ではあったが、教育にとってリアルの効果がいかに大きいかをあらためて認識もさせてくれた。
130年の歴史の中でわれわれは、第二次世界大戦や阪神淡路大震災という大きな災禍を克服してきた。今またコロナ禍という新たな災禍の中にあるが、それを克服して教育の松蔭の歩みを一層加速していきたい。
キャンパスから六甲アイランド、大阪湾をのぞむ
学院創立130周年の節目の年に、これまでのモットーである“A grain of mustardseed”(一粒のからし種)”の成長を動的に表現するスローガンが必要であると新たに作成された。一粒のからし種とは、それに姿かたちを変えながらの成長を期
待して神の愛と恵みの息が吹き込まれるならば、やがて鳥が枝に巣を作るほどの木になるというイエスの約束に由来する(新約聖書「マタイによる福音」)。130周年スローガンには、松蔭女子学院という場での学びと出会いを通して、絶えず自
分を見つめ直して古い殻を破り、新しい自分を発見することによって個性を確立し、社会に貢献する、光輝く女性への成長を促すという教育理念を込める。
現行の大学入試制度の中では、首都圏に位置し、かつ後期日程の定員を多く維持している大学としては、入学した学生にいかに学ぶ意欲を与えるか、言いかえればいかに教育力を高めるかは長年の課題だ。本学では前期日程、後期日程それぞれによる入学者について、入試の成績と在学時の成績の相関を調べてきた。ここで明らかなのは、入学後、どれだけしっかり勉強するかが卒業時の成績を左右するということだ。地頭が良かったり基礎学力がしっかり身についた学生が多いのだから、当然と言えば当然だが。そこでキャリア教育の導入も含め、10年ぐらい前から教育改革を加速してきた【下コラム参照】。今や、企業からも高い評価を得ているから(※1)、冷静に出口まで見通せば、けして最難関校にひけを取らないとの自負がある。 入学後の科目も工夫している。私の専門は物理だが、多くの学生にとっては、社会に出て何の役に立つのかが見えにくい学問かもしれない。手に取るようにわかる機械系などとは好対照だ。そこで1年のうちから、『物理科学と先端技術』などと銘打って、企業から技術者を外部講師として招き、物理を学んでおくと企業に入ってからどれだけ役に立つかを講義してもらっている。もはや、物理に入ったから物理しかしないのではすまされない時代でもある。また、神奈川県とタイアップし、全学部を対象とした半期で15回、県の職員による『神奈川のみらい」も開講している。 PBL(Project based learning:課題解決型学習などと訳される)など、調べて発表する授業も増やしている。どれも学科単位による地道な取組だが、こうした努力が徐々に実りつつある。
先進的な文理融合を図る大学院『先進実践学環』は、「応用AI」「社会データサイエンス」「リスク共生学」「国際ガバナンス」「成熟社会」「人間力創生」「横浜アーバニスト」の7つのユニークな研究テーマを設け、文系の学生は理系を、理系の学生は文系を学べるというように、これまで縦割りの多かった大学院に横串を刺す。「もちろん他大学にも『学部・研究科等の組織の枠を越えた学部プログラム』はあるが、学年定員42名と規模が大きい」と梅原学長。学部教育でも経済・経営の専門性と高度なデータ処理・統計分析を修得した人材を育てるDSEP(Data Science教育プログラム)、法学を中心に経済、経営、データ分析などを幅広く学ぶLBEEP(Lawcal Business Economics教育プログラム)が今春からスタートし、経済学と経営学の両方の専門性と英語による実践的コミュニケーション能力を育成するGBEEP(Global Business and Economics 教育プログラム)なども以前から開講している。ただ、「いずれにおいても専門性は担保したい。そうでないと大学で学ぶ意味がない」と梅原学長。