大学ジャーナル UNIVERSITY JOURNAL

トピックス|START LINE PITCH 2026

起業家育成も高大連携で。
近畿大学が、全国の高校生を対象に、
ビジネスアイデアコンテストを初実施。
全国38都道府県・170校、578組から選ばれた10組がアイデアを競う

稼ぐ力が衰えてきたと言われる日本。
そのために必要なのは、99.7%を占めるとされる中小企業を元気にすることであるのは言うまでもありません。
こんな観点から近年は、大学においても、高校においても起業家育成教育が盛んで、いまや一部の大学生、高校生のためのものではなくなりつつあります。こうした中、全国の高校と大学とで連携しようという機運も生まれています。
総合大学の中で、その先陣を切ったのが近畿大学。
先頃行われた近畿大学の『START LINE PITCH 2026』(高校生ビジネスアイデアコンテスト:8.23@近畿大学東大阪キャンパス)の様子を紹介します。

日本をもっともっと元気に

協賛企業賞受賞のみなさん

主催者側からの出場高校生へのメッセージ

開会にあたり、今回、勇気を持って応募していただいたすべての高校生、また厳正な審査を経て、貴重な夏休みにここまで来ていただき、これからピッチに臨まれるみなさんの積極的な姿勢に対して、心より敬服申し上げます。

そもそもこの会は、昨年、近畿大学の附属・準附属高等学校7校および工業高等専門学校を対象に始め、大きな手応えを感じたことから、今年は本学校法人の枠に留まらず、すべての高校生にエントリーしてもらおうと、全国規模での開催に踏み切ったものです。

お陰様で、全国38都道府県から170校・578組のみなさんにエントリーいただき、今日はその中から、事前審査を通過されたファイナリスト10組にお集まりいただきました。

ここまでの事前審査では、ほぼ差はついておらず、これからのピッチプレゼンテーションで全てが決まると言っても言い過ぎではないと思います。今日ご参加のみなさんには、あらためて気を引き締め、全力で臨んでもらいたいと思います。

こうお話すると、多少のプレッシャーになるかもしれませんが、将来、起業される、あるいは就職されるにしても、これからの人生には勝負どころと呼ばれる時がたくさん出てくると思います。例えば入社したい企業の最終面接。いくら学業成績が良くてもそこできっちり自分の魅力をアピールできなければいい結果を得られないかもしれません。また起業されたなら、ファンドやベンチャーキャピタルから出資を受ける、もしくは銀行からお金を借りる場でのプレゼンテーションなど、もっともっとプレッシャーのかかる場面が待ち受けているでしょう。

しかし今日は安心してください。舞台は大学の中です。「こんなことを言ったら怒られるのではないか」「ひんしゅくを買うのではないか」などとは考えず、自分なりに「これ」と思うピッチをやり切ってほしいと思います。

大阪は、商人の街と言われ、独自のアイデアを元に、これまでいろんな企業が立ち上がり、そして数々のイノベーションを起こしてきた土地柄です。中でも今日集まっていただきました東大阪は、全国有数の中小企業集積の街と言われ、大阪市内に比べ、ものづくりの工場、人を実際に抱えて操業している企業がたくさんあります。そうした企業の多くも昔からあったわけではなく、どこかのタイミングで誰かが起業してつくった会社で、今ではその3代目、4代目として活躍されている方も数多くおられます。

本学のメインキャンパスは、まさにこのようなベンチャー精神あふれる街の中に位置します。また本学は、5,774名の社長を輩出し※、全国の社長の出身大学ランキングでは全国で8位、関西では1位で、そのリソースも活用し、KINCUBAプログラム、そしてKINCUBA Basecampという施設を設けて、起業家育成、起業家支援に本気で取り組んでいます。

KINCUBA Basecampは、おそらく全国の大学でも数少ない365日24時間開いているインキュベーション施設で、起業を志す学生たちの部室といった感じのものです。先輩、後輩、同級生が混ざり合い、日夜、「先輩、起業したんですか。僕も来年しようと思うんですけど、どうしたらいいんですか」といったようなフラットな会話が飛び交っています。

こうした近年の取組もあってか、本学はこの6月の経済産業省が発表した全国の大学発ベンチャー(研究者も含む)数のランキングでは、全国で10位、西日本の私立大学では1位につけました。中でも、特に力を入れている分野の学生ベンチャー数は110社と、慶應義塾大学、東京大学に次いで日本で3位、まさにみなさんにピッチをしていただくのに相応しい場所ではないかと自負しています。

これからの約3時間、ご自分たちのピッチに全力で臨まれるのはもとより、他のチームのピッチから、たくさんの刺激をもらって、今後の活動につなげていただければ幸いです。みなさんのご健闘を祈ります。

※東京商工リサーチの2024年調査による。

学生ベンチャー数ランキング TOP10
2025年度・大学別

順位 大学名 企業数
1 慶應義塾大学 205社
2 東京大学 196社
3 近畿大学 110社
4 京都大学 107社
5 早稲田大学 88社
5 デジタルハリウッド大学 88社
7 立命館大学 86社
8 筑波大学 73社
9 情報経営イノベーション専門職大学 61社
10 東京理科大学 43社

出典:経済産業省『令和7年度 大学発ベンチャーの実態等に関する調査』より作成

最優秀賞

伝統素材「柿渋」で、土に還る農業用マルチを提案

「突然ですが、みなさんは野菜畑に敷かれた黒いシートを見たことがありますか?」の問いかけでスタートしたのが、「柿渋がつくる循環型マルチ資材 石油に頼らない農業へ。」を提案して、最優秀賞に選ばれた「せおと愉快な仲間たち」。

農地の畝を覆う農業用マルチは、使用後の回収・廃棄が農家の負担になる。チームは、日本の伝統素材である柿渋と紙を組み合わせ、役目を終えた後は土に還る農業用シートを提案した。

発想の土台になったのは、同校の授業「研究室」で柿渋について学んだことと、妹尾さんがカナダ留学を通じて深めた環境問題への関心だった。留学前は人前に出ることが得意ではなかった妹尾さんだが、帰国後、クラスの委員長への立候補など「一度やると言ったら引き返せないこと」にあえて挑戦するようになった。そして行動を重ね、自分を変える中で起業にも関心を持ち、伝統素材と現代農業の課題を結び付けるビジネスを構想した。

受賞後のインタビューでは、「ここまでの道程は決して《愉快》ではなかったが、それがかえってチームのみんなを成長させ、ビジネスアイデアもブラッシュアップできたのでは」と、喜びの中にも支え合ってきた仲間と先生への感謝も忘れなかった。そして「高校生であることも一つの価値。今のうちにもっともっと挑戦したい」と、事業化に向けて行動を続ける決意を語ってくれた。

優秀賞

廃棄パイナップルの酵素を、衛生・防災に生かす

「安全性」と「性能」のどちらを優先するのか?自らも小学生時代に苦しんだそんな二律背反の問いに対する答えとしてアピールしたのが、優秀賞に輝いた「酵素由来のTABELUT 消毒の常識を、いま噛み砕く」。黑阪さんは、廃棄されるパイナップルの葉や芯などに含まれるタンパク質分解酵素「ブロメライン」を活用し、水に溶かして消毒液や有機農薬として使うことを想定し、非常時の栄養補給にもつなげるタブレット/リキッドを考案。食品廃棄と衛生・防災の課題を一つの素材で結び付けようと考えている。

研究の出発点は、SSHの指定を受ける学校での探究の時間。文理融合で個人研究も許される環境の中、基礎研究にとどまらず、「実際にものをつくり、それによって世の中が変わる面白さ」を追いたいとテーマを探していた。そんな時、発見したのが「パイナップルの酵素はすごい」という科学動画。そこで紹介されていた廃棄部位に着目したのが、今回の提案の土台となる。

大阪大学SEEDSプログラムにも参加していて、大学教員の助言を受けながら研究も進める。ただ、研究だけするよりも、産学連携を通じて社会実装を支援してくれる大学を目指したいと、今から大学生活を夢見る。

「今日はいろんな仲間と知り合い、刺激もたくさんもらっただけでなく、こんな賞をもらえて、これからも頑張っていけそう」と喜びを隠さない。現在の研究については、安全性や用途の検証をさらに重ねてビジネスにつなげていきたいという。

研究と経験を、社会を変えるビジネスへ

技術・教育・福祉・環境 高校生の発想が並ぶ

近畿大学は2026年8月23日、東大阪キャンパスのオープンキャンパスに合わせ、高校生ビジネスアイデアコンテスト「START LINE PITCH 2026」の最終審査会を開催した。全国の高校・高専を対象にした形では初開催。書類審査と動画審査を通過した10組が、6分間のプレゼンテーションと6分間の質疑応答に臨んだ。

登壇したのは、防災と観光を組み合わせたサイクリングプログラム、AIによるリハビリ支援、学生向け仮眠枕、不登校の中高生の学習支援、壊れた器と職人をつなぐ循環型プラットフォームなど。身近な問題意識や地域・社会の課題を起点に、技術、教育、福祉、環境を横断する提案が並んだ。

審査は「社会性」「実現可能性」「収益性」「独創性」の4項目。着想だけでなく、価値の届け方や実現・継続の道筋まで問われ、審査は僅差となった。最優秀賞は郁文館グローバル高等学校「せおと愉快な仲間たち」、優秀賞は兵庫県立長田高等学校の黑阪航平さん。表彰は、社会実装へ向かう新たなスタートラインとなった。

大会DATA

  • 開催 2026年8月23日
  • 会場 近畿大学 東大阪キャンパス
  • 応募 578組(38都道府県・170校)
  • 最終審査 10組/発表6分+質疑6分
  • 審査項目 社会性/実現可能性/収益性/独創性
  • 最優秀賞 近畿大学経済学部 総合型選抜C(起業志向型)の一次審査免除※

※対象・有効期限等の条件あり

ファイナリスト10組(登壇順)

  1. 徳本大悟さん(松山南)
  2. せおと愉快な仲間たち(郁文館グローバル)
  3. 今治北高校 商業研究部
  4. teamばぁぐ(近大附属)
  5. 岡田大矢さん(AICJ)
  6. Suasualier(三国丘)
  7. 黑阪航平さん(長田)
  8. PARALLEL PHY(佼成学園)
  9. 松田桃佳さん(西大和学園)
  10. 松原悠樹さん(新南陽)

協賛企業賞

  • iU賞 今治北高校 商業研究部
  • NTT西日本賞 PARALLEL PHY
  • 大阪シティ信用金庫賞 岡田大矢さん
  • 大阪信用金庫賞 Suasualier
  • 新東通信賞 team ばぁぐ
  • ディスカバリー賞 松田桃佳さん
  • 南光不動産賞 黑阪航平さん
  • マグチグループ賞 松原悠樹さん
  • よりかけ賞 徳本大悟さん

協賛企業(五十音順): iU(情報経営イノベーション専門職大学)、NTT西日本株式会社、大阪シティ信用金庫、大阪信用金庫、株式会社新東通信、株式会社ディスカバリー、南光不動産株式会社、マグチグループ株式会社、よりかけ株式会社

会場の様子

START LINE PITCH 2026 最終審査会の会場
最終審査会の会場。10組が6分間のプレゼンテーションと6分間の質疑応答に臨んだ
最優秀賞の発表スライド「柿渋紙マルチ」
最優秀賞「柿渋紙マルチ」の発表。伝統素材で農家の負担を減らす提案
ユニフォーム姿で登壇したチーム
ユニフォーム姿でチームとして登壇した発表も
発表するファイナリスト
マイクを手に自分の言葉で提案を語るファイナリスト
最終審査会後の集合写真
最終審査会を終えて。ファイナリスト10組と関係者

RELATED

あわせて読みたい