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目指せグローバル人材 早く世界へ飛び出そう

文:大学ジャーナル編集部

初出: 大学ジャーナル Vol.100(2012 年 7 月)

グローバル化のために

オバマ大統領の諮問委員会が出したアメリカの国力、競争力を高めるための教育に関連する提言の一つに、理数系でPh・D・を取った留学生には、自動的に永久ビザを与えよというものがあります。日本も、海外から優秀な人材を招きたいと考えるなら学位を取った留学生、その多くはやる気があって優秀に違いありませんから、そんな彼・彼女ら全員に永住権を与えるぐらいの大胆な政策をとったらどうでしょうか。国内に向けては、子どもたちや若者に、できるだけ早い段階から世界の一員としての意識を持たせることが、大人やメディアの責任です。引っ込み思案の日本人学生でも、アメリカで勉強しているうちに積極的に手を挙げるようになります。異文化を受け入れるには慣れが必要なのです。経済面でいえば、日本は市場が中途半端に大きいことから、今のままでも何とか食べていけると安心している日本人が多い。しかし日本の一人当たりGDPが横ばいを続ける間、他の国ではどんどん上がっています。今や世界トップとなったルクセンブルグなどは、日本が1位だった1992年から2008年の間に、日本の3倍になっています。ですから、これからはもう日本だけでは食べていけない、しかし世界へ出ればもっと楽しいことがたくさんあるし、友だちができれば可能性はもっと広がる、ということを、子どもや若者に知ってもらわなければならない。それもできるだけ早いうちから。大学では今、秋入学の議論もありますが、それよりも大事なのは大学の中身を充実させること。それができれば留学生も来ます。留学生が3分の1ぐらいになって、授業の多くが英語で受けられるようになれば、さらに優秀な留学生が集まります。入学時期については、個人的には出て行く場合にも、入ってくる場合にも準備期間が半年ある今の方が便利だと思いますが、この議論をきっかけに教育のグローバル化について考えることは大事だと思います。国内でもう一つ大事なのは、企業、官庁がアメリカのようにPh・D・(アメリカの博士号の取得者)をきちんと評価して採用することです。今は学部卒や修士卒とそう変わらないのではないでしょうか。中でも官庁の責任は大きいと思います。企業も外国人をどんどん雇うこと。確かに小さい企業では大変かもしれませんが、そこを乗り越えると企業は強くなれます。

多様性を受け入れる

われわれ一人ひとりの意識改革も必要です。近くに外国人が住んだら嫌だと思うような感覚を多くの日本人が持っています。それを乗り越えるには、広い意味での異端者、つまり女性や外国人、エリート教育を受けていない人や高齢者など、社会の中心にいない人を社会の中心におくような具体的な施策が必要です。異端者への包容力を持つことは社会の多様性を高めることに繋がります。レールの上を一直線に進んできた人、エリート教育を受けた人ばかりを社会の中心に置く今のシステムでは、社会は弱くなる一方で、グローバル化の中では後退するばかりです。グローバル化とは同質のものが世界中にあることではなく、それぞれ異なったものがたくさん結ばれている状態をいいます。グローバル化とは多様性が増すことです。その中で国や企業が生き残り、発展していくには、その中でコミュニケーションが取れ、ビジネスを展開できる人間を作っていくことが不可欠です。まさにそれが、これからの日本の課題なのです。ど、それに逆行するような事象が至る所で目につきます。AKB48もどこかで変わらないとこれ以上大きくはなれないと思います。企業も同じで、日本で大きくなるだけでなく、世界、とくに発展途上国へ進出したければ、人と組織の多様化を図らなければなりません。日本や日本人のよさがすべて世界で通用するとは限らないということもあります。中国では、日本の自動車メーカーよりフォルクスワーゲン(VW)やゼネラルモーターズ(GM)のほうが優勢です。たとえば、GMは責任者を本国から単身赴任させずに、マニュアルを完備して現地の指導者に任せています。何事もあやふやにしないという契約社会でもまれてきたことが、グローバルな展開には有利なのです。日本でも、コマツのように中国子会社のトップはすべて中国人というように現地化を行っているところは、実際成功しています。契約も、給与も世界中で同じというルールにしておくことも大事です。この点、日本は、柱となる金融などでも決裁権が現地になく、ずいぶん遅れています。役所も同じ。ここを変えないと、大きなチャンスをみすみす逃すことになりますし、現地で好感をもって受け入れられることも少ないと思います。

世界の仲間と競争しよう

大学でも企業でも、外国人を入れると日本人が入りにくくなるという意見もあります。しかしもはや、そんな時代は過ぎ去ったと私は思います。これからは子どもや若者に対して、競争相手は世界の人だということを認識してもらうことが必要です。同時に、世界へ出れば楽しいということも伝えたい。内向き内向きと言われる若者ですが、真剣に話しあえば必ず反応します。そういう場を設けることが親や大学の責任だと思います。日本という狭いところへたくさん集まっているから、いじめも起こる。世界へ目を向ければいじめをしている暇はありません。そのためには、とにかく海外へ出てみること。外国旅行やホームステイを通じて、いろんな国の人と接すれば、みな同じ人間だと気付くはずです。今は外国から来た学生が元気で、その前で日本人学生が引いてしまうような場面もよく見かけます。これからは、語学力も含めて彼らと互角に競争できる力をつけなければ、日本の将来は不安です。今の若者は両親の庇護の下、冷暖房完備の生活が送れていますから、このままでいいと思いがちですが、その間、世界はどんどん進歩していますから、現状維持ではますます縮こまるしかなく、さらに水をあけられるばかりです。そうならないためにも、早い時期に世界へ飛び出し、そこでさまざまな友だちを作り、彼らと競争していくことがいかに楽しいかを知ってもらいたいと思います。

プロフィール

1966年京都大学工学部土木工学科卒業。72年ペンシルバニア大学大学院博士課程地域科学専攻修了。専門は都市経済学、地域経済学、空間経済学。ペンシルバニア大学地域科学部教授、京都大学経済研究所教授、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所所長などを経て、現職。京都大学経済研究所特認教授、甲南大学教授も兼務。共著に『日本の産業クラスター戦略:地域における競争優位の確立』。山口県立山口高等学校出身。

大学ジャーナル Vol.100 掲載

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