初出: 大学ジャーナル Vol.89(2010 年 8 月)
## 早稲田大学国際教養学部に入学して
早稲田大学国際教養学部(以下、SILS)では、その理念であるリベラルアーツを元に、さまざまなテーマ・分野を扱っています。入学して最初の1年のカリキュラムでは、少人数でのコミュニケーションを目的とした初級演習や環境・思想・経済等7つのグループから異なる3つのテーマを選ぶイントロダクションコース、英文エッセイの書き方を一から教わるアカデミックライティング(レベル分けテストによってクラスが分かれる)、第二外国語等が必修となります。
分野を問わない学習を積み重ねることで、広く知識力を養いながら留学先から帰国後の3年次までに専攻を決めていきます。
SILSの先生方は、それぞれの専門に基づいた授業を行っています。そのため、内容は先生によってさまざま。教科書をひたすら音読する授業もあれば、唖然とする程コアなディスカッションやプレゼンテーションを行う授業もあります。予備知識がなければこなせないような内容のイントロコースがあったり、一般常識を延々と続ける上級演習があったりと、あたりはずれが大きいのが一つのデメリットかもしれません。特に「純ジャパ」と呼ばれるSP1(国内受験生)の友人の中には海外経験がなく、日本の教育だけを受けてきている人もいるので、入学後に、約8割を超える英語での授業やライティング講座を帰国子女の学生と一緒に詰め込まれると大変です。帰国生の英語力に追いつくことに必死で勉強内容がなかなか身につかない……と中間・期末試験前に連続徹夜をして課題をこなす友人もいます。
## 留学の準備期間
SILSに興味を持っているみなさんの多くが、留学に関心があると思います。SILSでは留学が必須条件ですが、このスケジュールがまた少しハード。入学した直後の4月から春の留学フェアに参加(自分で調べる場合は不要)、カウンセラーやコーディネータと話し合いながらどんな国で何を学びたいか、どういう暮らしができるのかといった内容から、選択肢を狭めていきます。同時期にTOEFLを必ず受験し(非英語圏希望者も)、必要点数に達するよう別途勉強に励むことも大切です(最低点数を設定しない大学もある)。
後は11月頃の選考期間まではひと段落、とはいかなくて、選考時に最重要視されるGPA(成績評価)の維持や英語圏以外の国の場合、語学力を強化する必要があります。ほとんどが必修科目で埋まってしまう上に成績を落とせないため、気が抜けない時期が続きます。派遣先が決まる頃にはぐったりしている友人もいました。選考が終わって年明け、2月頃から順次決定の連絡が来て、ビザの申請や住まいの手配等を済ませ、夏に出発が基本スケジュールです。私は事情があって留学が免除されたため、友人に話を聞いてみました。
## 留学時に大切にしたいこと
英語圏に留学した友人は、思っていた以上に寮から大学までの距離が遠く、友達作りが思うようにできなかったそうです。場所を変えたくても英語が通じなかったらと不安で、最初の半年間は我慢して通い続けていたものの、いつの間にか英語を使って日常生活を送れていることに気づき、自分で現地校に掛け合って、近場でルームシェアを実現、充実した留学を終えて帰国の途についたようです。
英語圏だけでなく、非英語圏プログラムに参加する学生にも一貫して言えることは、SILSの留学システムで「何を勉強するか」よりも「自分をどう成長させるのか」が重要だということです。自分で考え、自分で決定する。そういった自己決断力の基礎を身につけ、卒業後のキャリアを考え始める時期に帰国を迎えます。
## SILSで拓く未来
私は元々、大学院で犯罪心理学を研究したいと考えていますが、就職を希望する学生向けには、キャリア相談会が学部や大学内にて随時開催されています。
SILSの学生の中には英語力や学部の特色を生かして外務省や国連の職員を目指す人も少なくありません。それぞれの夢を実現しようと3、4年次のゼミや卒業論文に取り組みながら、説明会やセミナーで情報収集を行っています。
いろいろと大変なことが多い大学生活ですが、友人みんなに共通するのは、それを乗り越えるためには、友達の存在が一番大きいと考えている点。SILSのカリキュラムは幅広すぎて大変、先生は専門的すぎてついていけないこともある。留学してホームシックにもなりかけた。でも、わからない、できないところを補い合って一緒に壁を越える友達がいるからがんばれる、これがSILSの学生の多くの意見です。少人数制の下、多様なテーマのクラスに参加することで、国内だけでなく外国の仲間もできますし、そこから価値観・文化の違いを学び、また交流を深められるのがとても貴重な体験です。
国際教養学部では、学生一人ひとりのニーズに合わせてカリキュラムを考えてくれることはありません。この学部でリベラルアーツを学ぶには、その良い点を自ら試行錯誤しながら探し、掘り当てていくこと。必要な情報か不必要な情報かを見抜く判断力が問われます。いわばDIY、実践型の人間を育てていくことが、この学部の真の目的のように思えます。数ある選択肢の中から何を選び、どれに注力していくべきなのか。それをある程度明確にすることができ、上手に計画が立てられれば次に繋がる。そんな環境を提供してくれる学部なのだと思います。
何をやればよいのかわからないけれど、どのような人間になりたいかは説明できる。逆に、人間としてどう成長したいかはまだわからないが、こういった分野を学びたい等、何か一つ芯を持つ人は容易に自分の道を切り拓くことができるはずです。



