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再構成ロボットへの道 その1 廃家電の分解から、投げる・移動しながらつかむ作業まで

文:大学ジャーナル編集部

再構成ロボットへの道 その1

言葉や画像を受け取り、次の動きを考える「フィジカルAI」が注目を集めている。けれども、工場や極限環境で働くロボットに必要なのは、器用に動くことだけではない。周囲を正しく認識し、何をどの順番で行うかを決め、ほかの物体にぶつからない動きを組み立てる。そして失敗したときには、どこに原因があったのかをヒトが確かめられなければならない。この「何を、どの順番で、どう動かすか」を考える作業計画を中心に、社会で役立つロボットを研究しているのが、大阪大学の清川拓哉先生だ。使用済み家電を壊さずに分解するロボット、状況に応じて商品を投げるか置くかを選ぶロボット、移動しながらモノをつかむロボットまで。共通するのは、AIに一気に答えを出させるのではなく、判断の過程を分け、失敗の原因を確かめられる形で組み上げるという発想である。

Profile
熊本高等専門学校専攻科を修了。奈良先端科学技術大学院大学で修士(工学)、博士(工学)を取得。大阪大学 大学院基礎工学研究科特任助教などを経て、2023年から現職。2023年から2024年にかけてドイツ航空宇宙センター(DLR)客員研究員。専門は作業知能とロボットマニピュレーション。仕事に応じて身体を変える再構成ロボットの研究に取り組む。

実世界で働くロボットをつくる①

失敗を説明できる「作業計画」がきも

動けば成功、ではない
――階層的な方法論による説明性

近年のAIでは、言葉や画像を入力すると、ロボットの動作まで一気に出力する研究が進んでいる。ヒトが「机の上のモノをとって」と伝えれば、ロボットが状況を見て動き始める。こうした方法は、家庭環境やサービス業の現場で、多少の失敗をやり直しながらヒトと暮らすロボットを実現するうえで、大きな可能性を秘めている。

一方で、製造、物流、廃棄物処理場、核融合炉などでは、一度の判断ミスが製品の破損や事故、深刻な生産性の低下につながることがある。想定している順序、タスクの選択、動作実行の理由がわからなければ、同じ失敗を防ぐための修正も難しい。

そこで、こうした現場では、ロボットの働きを大きく「認識・計画」と「制御・実行」の2段階に分けて考えることが有効ではないだろうか。まず、カメラなどで対象や周囲の状態を認識し、どの部品から扱うか、どこをつかむか、どの経路を通るかを計画する。次に、計画どおりに実機を動かすための制御を行い、作業を実行する。途中の結果を残しておけば、失敗が認識にあったのか、計画にあったのか、制御にあったのか、実行にあったのかを切り分けられる。

「大きなモデルがすべてを決めると、エラーが起きたとき、どんな過程を経てその出力に至ったのかを検証するのが難しいことがあります。実世界で働くロボットを考えるときは、プロセスを分け、順序立ててシステムをつくる方がよい場合もあります」

これは昨今AIと呼ばれている技術を使わないという意味ではない。清川先生の研究では、画像を理解するAI、次の動作を選ぶAI、実行後に成功したかを確認するAIなど、役割の異なる技術を組み合わせる。大切なのは、得意な仕事をそれぞれに任せながら、全体をヒトが追える形にすることだ。

たとえば、ヒトとロボットが一緒に部品を組み立てる場面を考えてみよう。ヒトが「もうちょっと上を持って」と言っても、「もうちょっと」が何センチなのかは明確ではない。清川先生たちは、言葉と画像を扱うAIに意図を読み取らせる一方、別の仕組みで動作が成功したか、最初の指示と矛盾していないかを確認する。曖昧な指示を受け止めながら、誤りを検出・訂正できる構造にすることで、ヒトとロボットの協調・協働作業をより確実なものにできるかもしれない。

廃家電を「壊さずに」分解する
――複雑な構造物に対する作業の難しさ

清川先生が企業と進める研究の一つに、使用済み家電などをロボットで分解する技術がある。資源を循環させるには、回収した製品をただ砕くのではなく、価値のある部品や素材をできるだけ傷つけずに取り出すことが重要だ。

しかし、分解は組み立ての単純な逆再生ではない。新品を組み立てる工場では、部品の位置や状態がそろい、決められた順番を繰り返せる。対して回収品は、機種も使用年数も異なり、変形や汚れ、欠損があるかもしれない。ネジや部品がほかの部品の陰に隠れ、先に何かを外さないと手が届かないこともある。力任せに引けば、再利用したい部品を壊してしまうし、作業中に対象の製品がずれたり倒れたりしてしまい、作業が中断してしまうかもしれない。

そこで利用するのが、製品の三次元CADモデルだ。コンピュータ上で部品をさまざまな方向に動かし、どちらへ抜けばほかの部品にぶつからないか、ロボットがつかめるかなどをシミュレーションする。物体の形状・構造上の実現可能性だけでなく、ロボットによる実行可能性も調べるのだ。そのうえで、外す順番、左右どちらのロボットアームを使うか、どこをつかむか、どんな経路で運ぶか、いつ動かすかを組み合わせて最適化する。

「価値のあるものを取り出すには、丁寧かつ迅速な分解作業が必要です。設計モデルから、ロボットが最小限の手順や動作で一つずつ取り外していく作業が求められます」

ドイツ航空宇宙センターでの滞在研究では、多数の部品からなるチェーンソー製品を対象に、設計情報から不確実性を考慮した組み立て順序とロボット動作を計画する研究にも取り組んだ。組み立てにも分解にも共通するのは、一つひとつの動きだけでなく、長い作業全体を見通しつつ、作業に生じる不確実性に対処する必要があることだ。

分解の自動化は、人手不足への対応に加え、資源を廃棄せず次の製品へ回す循環型ものづくりにもつながる。研究室で数回動かして成功するだけではなく、形や状態の異なる製品を、速く、安全に、何度も繰り返し扱えるか。社会で実際に働けるロボットにするための条件は多く、研究室でのデモ動作と実用化との間には、まだ大きな隔たりがある。だからこそ、企業と研究者が互いの視点を持ち寄る意味がある。

投げて置く、移動しながらつかむ
――その場に合う速く賢い作業

作業計画の面白さが伝わる例が、商品を棚へ並べるロボットだ。ヒトは通常、商品を手で持ち、目的の位置まで運んで置く。けれども、棚の奥まで毎回腕を伸ばすより、条件がよければ軽く投げ入れた方が速いこともある。

もちろん、どこへ投げてよいわけではない。周囲が商品だけなら倒してしまうかもしれないが、棚の角なら壁に当たって収まりやすい。空きの広さ、壁の位置、ほかの商品との距離などによって、投げる難しさは変わる。

清川先生たちは、物理シミュレーターの中でロボットに何度もモノを投げさせ、どのような条件なら成功しやすいかを学習させた。そして場面ごとに、確実に置く「ピック・アンド・プレース」と、効率のよい「ピック・アンド・トス」をロボットが自分で選べるようにした。

もう一つ、移動しながら止まることなくモノをつかみ上げる作業も実現した。ヒトは、モノを片付けたりコンベア上のモノを仕分けたりするとき、動いている物体に対しても柔軟に手を伸ばし、つかんで持ち上げることができる。

ヒトは、経験を重ねるうちに、対象のどこをつかめばよいかを身につける。しかしロボットには、そのような動作の方策があらかじめ備わっているわけではない。そこで、物理シミュレーターの中でロボットに移動しながらのつかみ上げを何度も試行させ、物体を撮影した画像上のどこをつかめばどの程度成功しやすいか、つまり把持成功確率を色のグラデーションで示す画像を生成するモデルを構築した。

ロボットは、つかみに行く前にその画像を生成し、成功しやすい場所を頼りに動く。これにより、さまざまな形状や特性をもつ物体を、移動しながらつかむことに成功している。

作業の段取りを変えるだけでなく、仕事に合わせて身体そのものも変えられないか。清川先生の研究は、関節や脚を組み替える「再構成ロボット」へと広がっている。次号では、その未来像と、清川先生が研究者になるまでの歩みを紹介する。

作業計画とは?
ロボットが長い仕事をやり遂げるための「段取り」

作業計画とは、ロボットに与えられた目的を、実行できる手順と動きへ落とし込む技術の総称だ。

たとえば家電を分解するとき、まず「どの部品を外すか」というタスクを決める。次に、ほかの部品とのつながりを考え、「どの順番で外すか」を決める。そして、それぞれの部品を「どこでつかみ、どの経路で動かすか」という動作を計画する。複数のロボットが働くなら、「どのロボットが、いつ作業するか」というスケジュールも必要になる。

ヒトは、目の前の状態に合わせて自然に段取りを変える。しかしロボットには、衝突しないこと、対象を落とさないこと、必要な力を超えないことなど、多数の条件を数値やルールとして与えなければならない。

作業計画の研究は、単にうまくいきそうな動作を探すだけではない。安全性、作業時間、エネルギー、部品を傷つけないことなど、複数の条件を同時に満たす「よい段取り」を探すことでもある。こうした作業計画は、ロボットを実験室のデモにとどめず、実際の現場で安定して働かせるために欠かせない技術である。

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